Things I Didn't Know

ミュージカルが好き。歌とダンスと物語が好き。定期的にソウルへ行きます。

【観劇レポ】フランケンシュタイン 3/17 ドンソク・ウヒョク 3/18 ジュンサン・ウンテ

※こちらは公演の詳細なレポになります。作品自体のあらすじと感想につきましては下記記事をどうぞ!

 

 

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3/17~3/20とソウルでフランケンシュタイン5公演を観て参りました。かつでないほどのめりこんだ作品、4ヶ月に渡る公演もとうとう千秋楽!幸運にも最後の4日間の公演を観ることができましたので、まずはドンソク・ウヒョク、ジュンサン・ウンテのペアマッコンを観て来た感想をだらだらと書き綴りたいと思います。


◆3月17日ソワレ

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[ビクター/ジャック]チョン・ドンソク
[アンリ/怪物]チェ・ウヒョク
[エレン/エバ]ソ・ジヨン
[ジュリア/カトリーヌ]アン・シハ

一発目は最愛のドンニュペア千秋楽!

《たった一つの未来》では最後の二人の「위해」がいつになく力強く、歌い切った後にウヒョクアンリが高揚した笑顔を見せたのが、なんかものすごく気持ち良かったです。そして《だけど君は》で既に目を潤ませるウヒョクアンリ。あの暗転する直前の一瞬の目を閉じて幸せを噛み締めるような笑顔が好きなんですよね…

パーティ会場ではビクターが「ドイツの女性は脱がせたら見かけより太ってる」って話してるときにウヒョクアンリがすごい呆れた表情してたのが潔癖ぽくて良い。あとシュテファンと客に喧嘩売って出て行くビクターを引き止めようとする動作。ルンゲが「大変申し訳ありません」と詫びるシーンで続いてアンリも「大変―」と言いかけてルンゲに「行くぞ行くぞ」って無理矢理連れて行かれるところ毎回可愛いんですけど、この回はめっちゃ納得いかなさそうに振り向きながら「あに…」って言ってるのが、ちょっと空気読めない子な感じが出ててかわいい。

《孤独な少年の物語》では母親の遺体を引きずっていく子ビクターを走って追いかけようとして柱に突き当たり、幻だってことに気付いて悔しそうに軽く柱を叩くウヒョクアンリ。ベッドの脇に跪くところでは、子ビクターに手を伸ばそうとしてぐっと拳を握り直す。2幕の《その日に私が》でもそうなのですが、フランケンはこの回想と現実が交差する演出が素晴らしいと思います。手を差し伸べたいのにできない、声が届かない、っていう…。《孤独な少年の物語》でのアンリの子ビクターの幻に対する視線は酒場のシーンや《君の夢の中で》に繋がる重要な部分なので、この日のウヒョクアンリのお芝居は特にそこが深まっていてすごく良かった。

実験に失敗したビクターがアンリに縋りつくシーン、エレンの存在に気付いて恨めしそうにウヒョクアンリの襟をぐっと掴むドンソクビクター。エレンに「ビクターをよろしくお願いします」と言われたアンリの台詞、

アンリ:ビクターは僕にとって友達以上です。僕は医者ですが戦場で死んでいく兵士たちのために鎮痛剤を出すこと以外に出来ることは何もありませんでした。ですがビクターは戦場で別の世界を夢見ていました。ビクターがみる夢…僕はその夢に一緒に参加したくてここまで来たのです。

エレンを安心させるように穏やかな笑顔で言うのですが、この回では「友達以上」のところなど、これを言いながら何度も泣き出しそうな表情になってて…あんな顔でこれを言ってるのは初めて見ました。

そしてドンニュペア最後の酒場は、ウヒョクアンリが潔く呑みまくる!一杯目一気に飲み干して、すぐに注がれすぐに飲み干す。さらにドンソクビクターが自分のジョッキを突きだすとそれも飲み干す。三杯一気に呑んじゃったよ?大丈夫?さらに調子に乗ったドンソクビクターが瓶ごと呑ませようとすると「それはちょっと」って感じで拒否。 テーブルの上、「僕には両親も兄弟もいないが」と歌うアンリを見つめるドンソクビクター。「ただ一人の友がいるということ それ以上何が必要だろう」って言われるところで幸せそうに笑う。テーブル降りてからのダンスも二人とも髪を振り乱して満面の笑顔で。最後もう一度テーブルにあがるところでは大分お酒がまわってきたようで2,3歩よろめくウヒョクアンリ。「먹고죽어!(飲み干せ!って感じで合ってる?)」とさらに自分のジョッキから呑ませるビクター。アンリ、もう最後のところはへなへなになりながら踊ってます。

歌い終わり、ふらふらよろめくアンリの背中を嬉しそうにぺしぺし叩くビクター。 そんですぐ人の顔触るドンソクビクター、アンリの頬挟みながら「葬儀社!」。ウヒョクアンリはほっぺたをぷくっと膨らましてルンゲにサムズアップ。か、かわい~。ドンニュペア最後のコアラ抱っこ。何回観てもかわいい~。泣ける~。 ルンゲが「午前0時までに手に入れておくと言われました」と言うところでは後ろを向いて上の方に掛けてあると思われる時計を確認する仕草。そしてドンソクビクターお決まりの「ルンゲおいで」からの「するもがいっそっそ(使い道があったな)」なんですがこの日のするもがいっそっそ、なんかフンフン言いながらルンゲ抱きしめてて変態ぽい!そしたらウヒョクアンリも「ルンゲこっちです」からのビクターの真似してフンフン言いながら抱きしめて「ちぇごえよ(最高です)」。

最後まで楽しい楽しい酒場でした。アドリブもいっぱいで毎回微妙に関係性が変わってたりして中の人もきっと楽しかっただろうな~。もー、大好きだったわー。ドンニュの酒場を全回分収録した映像が発売されたらそこそこ積めるんだけどなー。

《人殺し》で出廷するウヒョクアンリはいつもすごく怯えた顔をしていて、ウォルターの母親に糾弾されるところでは何か言いたげなのをぐっと堪えた表情をするのですが、今回《人殺し(リプライズ)》で二度目に出てきた時にはいつになく落ち着いた顔をしていて、もう覚悟は決まっているという雰囲気でした。酒場までは上品にセットされていた髪が崩れて顔に前髪がかかってるのが、すごく良いんですよね…

そして《君の夢の中で》。もうビクターの声を聞いた途端に泣き出しそうになっているのに抑えたトーンで「来てくれたんだね」を言うのも切ないし、なかなか顔を見ることができなくて背を向けたままなのも切ないし、泣きながら精いっぱいの明るい声で「覚えてる?」を言うのも切ないし…。歌も躊躇なく感情を溢れ出しながらで、声は揺れまくるし鼻はすするし、歌唱的な意味で言うと千秋楽の方が良かったのですが、この人間くさいアンリにはまってしまった私にとってはこの日の《君の夢の中で》は最高に胸に来るパフォーマンスでした。「僕のために泣くなこれだけは約束してくれ」は力強く。握ったビクターの手がなかなか放せなくて、「共に夢を見ることができるならば」はビクターの手に額をつけ て泣きながら。ドンソクビクターもずっと弱々しく嗚咽を漏らしていて、いつも最後泣き叫ぶところも消え入りそうな泣き声で「頼む事実を言えアンリ…」ウヒョクアンリはその声を聞いて縛られた両手をあげて袖で涙を拭い、笑顔を作って振り向こうとするのですが、振り向くと泣き顔になってしまって前を向きなおす…っていう一瞬の芝居が、鮮烈に脳裏に焼き付いていて、思い出すたびに泣きそうになってしまいます。

やっぱりドンソクさんとの最後の公演だったというのも気持ちの入る要因にはなったのだろうと思いますが、この《君の夢の中で》は一つの到達点だったような気がするし、まだまだ短い間、少ない回数ではありますがウヒョクくんを観てきて良かったなと心から思いました。

ドンソクビクターの《偉大なる~》も相変わらずの圧巻の歌唱で、ガラスケースに縋りついて「お願いだ目を開けてくれ」と言うところは鬼気迫る絶叫でした。

◆◆◆

2幕《逃亡者》では、わりといつも怒りまくってるウヒョク怪物に哀しみの色が前面に出ていて、アンリと呼ばれ「そんな風に呼ぶな!」と声を荒げるところでは顔も声も怒っているのに涙を出していたり、「“なぜ帰ってきた”“何を望んでいる”?」で笑ったあとにふっと力が抜けたように深い哀しみの表情を見せたのが印象的でした。

あとドンソクジャックのねっとり感が凄かった。「かわいこちゃん」言いながらウヒョク怪物の顎撫でる時の顔が妖しい。私は見てないのですがアンサンブルの男の手にキスしてたらしいしやはりドンジャックはバイセクシャル設定なのではないでしょうか。怪物の肩をねっっとりと撫でた次の瞬間に思い切り蹴りを入れるのがまじで怖くて好き。あとチュバヤに捻られた手をイゴールに直してもらって、「お、直った~☆」って顔してるのがかわいかったです。

カトリーヌが怪物を裏切ってエバに慈悲を乞う時のウヒョク怪物、前はもっと呆然としているだけだった気がするのですがずっとカトリーヌを目で追い、途中から諦めたように天を向いていました。《私は怪物》は「何か言ってください」のところ、ウンテさんと同じように台詞調で言うようになりましたね。いつも「誰かが私を抱いてくれる夢」で自分を抱きしめるところで涙で前が見えなくなってしまいます…

《絶望》でビクターに縋り付かれるところでは、自分のコートを掴むビクターの手を落ち着いた表情でじっと見つめたかと思うと、次の瞬間獰猛な顔つきに変わり「だめだ お前は最後まで生きなければならない」とビクターの首を絞める。私が今まで気付かなかっただけかもしれないのですが、この時ドンソクビクターは本当に窒息しそうになっているんですね。

《傷》はもう「そう、私には傷がある 君も大人になれば 人間のふりをするだろう?」がものすごく優しくて子ビクターへの愛情が感じられる言い方。「あの世界の果て」であんにょんと手を振るのは最後まで固定になりましたね。そして北極に着いたところでは背中を向けながらもオーロラを目で追っているのがわかりました。

怪物の足を刺し、2度目にナイフで襲いかかる時にドンソクビクターが「だめだ、もう終わりにしよう」。撃たれたウヒョク怪物は「一人になるという悲しみ…」と言いながら後ずさるビクターの手をぐっと掴み、「ビク…トォォォ!!」と出せる力のすべてを振り絞ったような強い声で呼びました。こんな口調でビクターの名前を呼ぶところは私も初めて聞いたし、他の回でもなかったようです。もうこれだけでアンリ/怪物がどれだけビクターを憎んで愛してたかがわかるような声でした。そしてか細い声で「アンリ…アンリ…」と呼びながら頬に触れようとするビクターの手をすり抜けるように倒れていきました。

カーテンコールでは一人で出て来るところでにこっと笑い指ハート。最後は向き合ってドンソクさんが腕を広げたところでウヒョクくんがお辞儀。ドンソクさんもお辞儀してハグ。ハグしたままウヒョクくんがゆらゆら横に揺さぶる。ドンソクさんが両手でウヒョクくんの頬を挟み顔を近づけて笑い合って緞帳。

マッコン渡韓初日にして最愛ペアが早速終わる…。渾身の最終公演を観られて本当に良かったです。2人とも次もまた出てくれますように。

◆◆◆

続きましてユウンペア千秋楽。

◆3月18日ソワレ

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[ビクター/ジャック]ユ・ジュンサン
[アンリ/怪物]パク・ウンテ
[エレン/エバ]イ・ヘギョン
[ジュリア/カトリーヌ]イ・ジス 

前回ウンテさんの喉の不良によるキャスト変更で観られなかったので、ようやく念願のユウンです。千秋楽に滑り込めて良かった。ウンテさんのアンリ/怪物を観るのも年始以来で、しかもその時はフランケン自体初見だったので、やっと細かいお芝居に注目できて気付くことの多い公演でした。

まず最初から、ウンテさん接合する敵兵の足をしっかり持ち上げて見せてくれるのね。ウヒョクくんの時いつもあんまりよく見えないんですよね。小道具スタッフにも優しいウンテさん…。そして冒頭のウンテアンリはとても暗い目をしてる。《だけど君は》までは基本的に固い表情で、世間に絶望して心を閉じてしまっている感じ。だからビクターに心動かされた時の表情の変化が見えやすいんですね。前も書いたと思うけど、《たった一つの未来》終わりの握手したあとに自分の手をじっと見るところがすごく好き。そのウンテアンリと気安くて自信に溢れたジュンサンビクターは対極にいる印象で、その2人が1幕の終わりに向けて近付いて行く感じがとてもバランスが良いと思います。ジュンサンビクターの「ぷたぎや、ちんぐ?(お願いだ、友よ)」ってちょっと疑問系な言い方好きだった。

あと、シュテファン達の前での自己紹介が長いw ウヒョクアンリいつも「はじめまして、アンリ・デュプレー」までしか言えないんですよねw ウンテアンリは最初すごい呑気な表情でビクターを見てるのが、険悪な雰囲気を察してルンゲに「何これどういうこと?」みたいな顔で話かけてました。

酒場のジュンサンビクターのやさぐれぶりが酷くて、「私ビクター・フランケンシュタインもほんのつまらない人間だということをー」のところでは他の客の酒を倒しながら喚いて、突っ伏して泣いていて、ものすごく悲壮感の漂うシーンになっていました。とにかく愛に飢えていて、誰かの支え無しには生きられないと思わせるビクターなので、すべてを受け入れられそうな寛容さを持った母性の強いウンテアンリとの相性は完璧だと思います。

序盤が固いアンリだっただけに、ウンテアンリが楽しそうに踊り出すとすごく嬉しくなる。さぁ来い!って感じでジュンサンビクターをテーブルの上に呼ぶ。ジュンサンビクターは「よーし、いっちょ踊っちゃうぞー」って感じで腕まくりするんですが、大して踊らないのがかわいい。 そしてウンテアンリ、大サビ直前にいつも「もう一度!」っていうところを「もう本当に最後だ!」に変えるという泣けるアドリブ。これ、自分のマッコンではなくユウンマッコンで言うのが意味ありげに思えて切なくなります。今回のキャストの中で次の再演に出ない人がいるのは当然なんだけど、皆また出て欲しいよー…

ルンゲが葬儀社のニュースを持ってきたところでは

ルンゲ:葬儀社を訪ねたんです
ビクター:もう1回言ってくれ、私よく聞こえなかった
アンリ:葬・儀・社!(耳元で囁き)
ビクター:もう1回だけ
アンリ:葬!儀!社~~~!(囁き)
ビクター:そこ、もしかしてこんな所じゃないか?人が死んで!一番先に行く所!そうだろ!?

そして歓喜の墓堀りジェスチャー。感極まった感じで言うジュンサンビクターもちょっと素で笑いながら囁くウンテアンリもかわいいー!!

これ、3/10のユウン回でもジュンサンさんが同じところでアドリブを仕掛けていたらしいんですがその時は、

ビクター:ルンゲ今何だって…?
アンリ:(困惑)…葬儀社…?
ビクター:葬儀社は何をする所だ?
アンリ:(笑)…?
ビクター:人が死んで一番先に行く所じゃないか!

っていう感じだったらしくて、リベンジアドリブだったんですねw アドリブがあまり得意ではないらしいウンテさん、ドンソクビクターが暴れすぎて椅子倒しちゃうというハプニングがあった時も困って笑ってたみたいだし、そんな素のウンテさんを見れた人もだいぶラッキーですよね~。

《人殺し》では揺るぎない表情のウンテアンリ。だけどリプライズでビクターが連行される時に捌けて行くビクターをじっと見てるのが泣ける。《君の夢の中で》でも絶対にこの人の決めたことを覆すことはできないと思わせるような強く頑な表情で歌いかけるのですが、ビクターが連れて行かれると辛そうな顔になるんですよね。どれだけ強い人なのかと…。

◆◆◆

2幕の《逃亡者》、ウンテさんはお休みして以来「そんな風に呼ぶな!」が無くなったんですね。急に激昂するところ好きだったのですが、じわじわ怒りを募らせていくのも良い。「“なぜ帰ってきた”“何を望んでいる”?」あたりから静かに涙を流していて、「人間」という言葉を口にするところは怒りに震えるような言い方。

闘技場では対戦相手の首を捻ろうとしたところでじっと顔を見つめ、頭を抑えて苦痛に顔を歪めながら出て行くところが好きでした。《私は怪物》でも、やっぱりウンテ怪物は「人間」ってワードの言い方に強く感情を込めていると思う。年始に観た時は静かに絶望に陥り涙していたので、この回ではもうのたうち回って苦しみ傷を確かめて泣くお芝居をしていて、そこまでで抑えていた感情を一気に爆発させたという感じでした。

ちょっと話が前後しますが、カトリーヌの話をします。

カトリーヌ役のイ・ジスさん千秋楽にかけてお芝居も歌も本当に良くなったと思います。怪物をくすぐるところも北極を教えるところも母性に満ちていて、心を預けたくなる優しい表情になりました。そんで、スパーンってえらい音たてて怪物の頭をはたくんですよね。痛そう。北極に行きたい行きたいと言うところから既に泣いているウンテ怪物の涙を「そこには悲しみが無い」のところで拭ってあげるのも好きです。

2人で北極の幻を見るところでは怪物がカトリーヌの手を強く引いていて、自分が彼女を連れていってあげたい、という感じでした。カトリーヌとの関係ではウンテ怪物が一番恋を匂わせる表情をするのですが、ジスカトリーヌもうっとりとした顔で怪物を見ていて、明らかに恋愛感情が芽生えていました。《生きるということ》では独房に入れられるときに隠れているカトリーヌに気付いて必死にそちらを見ようとするウンテ怪物。器を受け取る手を掴まれた時のジスカトリーヌの振り払い方が恐怖に満ちてて良かったです。

で、前にも書いた通り私は物語の中でカトリーヌの果たす役割としては怪物の疑似母という部分が大きいと思っているので、怪物とカトリーヌの恋愛感情についてあまり考えたことがなかったのですが、原作では怪物は“同じ欠陥を持った相手なら私を拒みはしないだろう”という思いで伴侶を求めていたことを考えると、傷を分かち合える相手として恋心を抱くのは当然のことなのかもしれないとこの時初めて思いました。

怪物は、ビクターの伴侶(候補)であるジュリアには、カトリーヌの姿を重ねたんじゃないかと思います。怪物はカトリーヌが裏切らなければならなかったことも理解しているだろうし、恨むべきはカトリーヌを傷つけた人間なのだと知っているとは思いますが、もしかするとジュリアを殺す時にはカトリーヌの裏切りを思い出したんじゃないかって。実際舞台では同じ役者が演じているわけですが、設定としてもジュリアとカトリーヌの外見が似ていたのだとすれば、怪物はジュリアを殺す時に躊躇したでしょうか。自分が手に入れられなかった伴侶をビクターが持っていることを許し難いと思ったんでしょうか。

ジュリア殺害後、変装した怪物がビクターの前に姿を現すところでは、ウンテ怪物はずっと嬉しそうに笑っていて、ただただ自分のためにビクターが一人になったことを喜んでいるような印象でした。ウンテ怪物は神に遣わされた存在っていうイメージが強かったので利己的な部分が見えたことは驚きです。人間を伴侶にすることはできないことを知った時に怪物に残されたのは創造主であるビクターだけなので、ビクターと世界で2人きりになるためにジュリアを消したんだとこの時感じました。

前に引用したとおり、原作には“人間という未完成の生き物には欠けた部分を埋めてくれる存在が必要なのだ”というメッセージがあります。アンリは自分の欠けた部分をビクターに満たして貰えて、今度は自分がビクターの傷を埋める存在になろうと命を投げ打ったのだと思うし、怪物となってもそれを求めていたと思います。ビクターもきっと他人に対して同じことを求めていただろうに自覚できないまますれ違いが起こってしまったんですね。2人が補い合って満たされたような気になる瞬間が酒場のシーンにはあったことを思うと悲しいです。《傷》の半月にもこの辺りのメッセージを感じてしまうのは、最近観返した『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の影響も大いにありますね。

ウンテアンリ/怪物の中では私は《傷》が一番好きです。特に何か変わったことをやっていたわけでもなんでもなくただ穏やかに歌っていただけなのですが、とにかくウンテさんのすべてを受け止めて抱きしめるみたいな歌声が、《傷》の持つテーマと完璧にマッチしていると感じたんです。あんまり感覚だけでものを言うのはどうかと思うのですが、これに関してはそう感じたんだからしょうがないとしか言いようがありません。

他人を愛するってことは、相手の持つ傷ごと受け入れることなんじゃないかと思います。《平和の時代》で、私の弟は傷ついているだけだと歌うエレンやジュリアも、《孤独な少年の物語》でビクターの過去を知ったアンリもそれができていたのですが、ビクターはそのことに気付かず、傷を持って生まれた怪物を受け入れることができませんでした。怪物は「あちこち傷だらけね」と言いながら傷の手当をしてくれたカトリーヌに出会って初めて愛を知って、それを失ってしまったけれどアンリの記憶を取り戻すことによってビクターの傷を受け入れられたのではないかとウンテ怪物の歌声を聴いて感じました。だけど同時に傷ついたビクターにはそれができないことを知っていたから、首の傷に気付いたビクター少年にたじろいだ表情を見せ、「大人にならないで」と言って傷を受ける前にビクター少年の時を止めようとしたのではないかと思います。

北極でウンテ怪物は微笑みならがビクターを待ち、ナイフを持ったビクターと組み合いになるところでは襲う意志はなくただ抱きしめているようでした。最後は「ビクター、私の友達」と呼びかけ、幸せそうに微笑んだ顔で息絶えます。あの優しい表情は、やっぱり神様に遣わされたとしか思えません。ウンテさんの演じる受容のアンリ/怪物は他の人には絶対にできないのだろうなと感じます。

◆◆◆

ということで、残すところ3組の最終公演となりました。今回の渡韓では5回フランケンを観たので記憶力に限界を感じているのですが、メモを頼りにゆっくり思い出しつつ書こうと思います。既に強烈なフランケンロスに襲われていて毎日目を覚ましてはフランケンの上演してない世界に絶望してますが、大マッコンまで書き終えるまでは私の今期フランケンは終わらないって気持ちでキーボードを叩きます。といってももう色々語り尽くした感はあるので、覚えているディティールだけ…あとメモっておいた今期のアドリブをまとめるつもりです。頑張ります。