Things I Didn't Know

BTSと韓国ミュージカルが好きです。

【BTS】『BE』関連インタビューをおさらいする (2/2)

 ▼こちらの続きです。

ozmopolitan.hatenablog.com インタビューを読み返しながら色んな関連コンテンツを開いてしまい、記憶に留めておきたいことメモみたいになってしまいました…。言葉にするのは難しい部分も多かったのですが、こうして書いておかないと忘れてしまうことも多いので、ゆっくりおさらいする時間が持ててよかったです。

 

 

【JIN】

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 自分が望むものを探した結果、気が向くままに生きることが自分のスタイルだと知ったというジンくん。

ただ仕事をしていること自体が幸せで、今の瞬間瞬間がとても楽しくて、それ自体が僕の人生みたいになりました。練習生の時は、本当にそんなことを考えもしませんでしたね。目標自体がありましたから。ところが、最近は目標が、何も考えずに生きること。目標というよりは、自己防衛なんだと思います。

自己防衛だという本人の言葉どおり、「過去は全部忘れた」「未来への負担感はない」と語る部分は自分に言い聞かせているように思えました。7人がウェンブリー公演の直後にいつか来る着地について話し合っていた時*1 にも感じたのですが、大きなことを成し遂げた時に喜びに浸りすぎることなくクールダウンしようとするバンタンは、未来の自分たちを守っているように見えます。〈小さなもののための詩(Boy With Luv)〉で歌われたように、些細なものに目を向けることを実践しているのだなとインタビューを通して感じました。「何も考えない」のはとても難しいこと。意識的に今に集中することがジンくんの自分を守る方法なのですよね。

 

自分がこんなにまでお祝いの言葉と愛をもらってもいいのかと思ったんです。自分はそんな人じゃないんだけど、と思いましたし。今はある程度克服したんですが、ほんの数日前までは、とても負担を感じて、仕事するのが難しいくらいでした。

本当にすごく一生懸命やって、たくさん活動をしたのに、結果を実感できないんです。

コロナ禍でも旺盛に活動し、たくさんの人を幸せにしてきたバンタン。2020年も鬱屈とした日々が明るくなるような贈り物を沢山もらって、幸せにしてもらえた一方、ずっと「7人に返せてない」という感覚があります。記録や賞よりも大切にしていることがあるとわかるから、それが叶わないことが悲しいし、落ち込んでいる姿を目の当たりにして無力感が大きいです。

いつも「ネガティブな面をファンに見せたくない」と言うジンくんがここで率直に思いを語ってくれたのは、しばらくあとにこの時の感情を歌にした〈Abyss〉のリリースを控えていたからなのではないかと思います。

パンPDと話してみたんですが、 今この感情を歌にしてみたらどうかと言われました。「うまく作る自信もないし、良いものができなかったらどうしよう。僕はもうそうしてはいけない位置に来てしまったのに…」と言ったらパンPDは、「そんなことは重要ではない。だけどやってみたら君は絶対うまくできるはずだよ。君に合う人を探してみる」とおっしゃいました。*2

「考えずに生きる」を目標にすることと〈Abyss〉の「あの暗闇の中にいる自分を探しに行く」は相反するように思えるけど、どちらもジンくんの本心であり、自分を愛する方法なのでしょう。音楽活動がもたらした苦しみや不安を音楽にするのは、とても勇気のいることだったはずです。「僕よりももっと音楽を愛する人は多いのに」と言うジンくんですが、「音楽の中だけは悲しい感情を見せてもいいと思える」という言葉からは音楽への深い愛情を感じました。その歌に心を動かされている人がいることが、十分に伝わっていますように。

曲作りをサポートしたPDやナムジュンにも救われたし、リリース翌日の誕生日にテヒョンがたくさんの人からのメッセージ動画を集めて「ヒョンはこんなふうに沢山愛されてる人なんですよ」と伝えたエピソード*3 からも、バンタンがお互いに支え合っていることが感じられて嬉しかったです。

 

【JUNGKOOK】

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ジョングクのインタビューは、とにかく変化への意欲がビシビシと伝わってくる熱量の高い内容でした。

――最近、活動している自分の姿には、満足されていますか。
いいえ、100%満足してはいません。最近「Dynamite」でステージに立ち、パフォーマンスを披露しましたが、僕の足りない面が常に目につきました。

でも、自分なりの色はあると思っていて、静かに、静かに人々にゆっくり一歩ずつ近づいていって、「僕はこんな人です」って伝えたいと思ったりして。 

ジョングク本人以外は誰も知ることのできない「足りない面」。いつも完璧にしか見えないのですが…。自分への評価がとても厳しいのは相変わらずですが、ボーカル面や仕事への姿勢についてはこれまで以上に矜持が感じられました。「成長したね」と言うホソクに「昔の僕じゃないですよ」と笑うところもすごく好き。2020年は〈Stay With You〉〈Your Eyes Tell〉〈Stay〉に〈Life Goes On〉のMV監督と創作が形になったものが多かったですし、特に〈Your Eyes Tell〉発表時期の日本活動では目に見えて表情が明くなっていましたよね。リリースを重ねて自信を身に着けていっているんだろうと想像して嬉しくなりました。

『BE-hind story』では「同じように曲づくりしてるけど、日本版に採用されやすい。昔から日本のアニメに親しんでいたからか日本の感性と合うみたい」と話していました。日本語版や日本オリジナル曲はメンバー参加度が低いこともあり、私はもともとよく聴く方ではなかったのですが、ジョングクらしさが活かせる音楽活動のフィールドが本国とは別の場所にもあって良かったと心から思います。〈film out〉の曲づくりについても今後詳しく聞ける機会がありそうで楽しみです。

今後やってみたいこととして「架空の物語を歌にしてみたい」と話していたことにもかなりわくわくしました。色んなアーティストのカバーを通してボーカルスキルを磨いてきたジョングクですし、きっと得意なんじゃないかと思います。〈Your Eyes Tell〉も〈film out〉も映画のテーマソングなので、これをきっかけにそんな思いが湧いたのかもしれないですね。

 

この曲(Life Goes On)に自分の個性を活かして入れようとするのではなく、この曲に自分を声を少し足そう、という気持ちが強いですね。歌詞を見ても、「世の中が止まってしまっても、悲しんでばかりいられないのは、人生はこれからも続き、ずっと流れていくから」という複雑な悲しみに僕の色を少し混ぜたかったです。

メンバーのレコーディングを全部聴いてから、どのような声で歌うかを考えたというジョングク。「僕の色を少し混ぜる」という表現が好きです。ボーカルトレーニングの話でも「声の色」と表現していましたよね。絵を描くことが上手で、映像作品でも色味を変化させることによってストーリーを見せるジョングクは、音楽に関してもそれぞれの曲の「色」が見えているのかもしれません。曲づくりに関しても「トラックも何もない方が、大きく広げて描くことができる」と話していたので、白いキャンバスに絵を描いていくような感覚をもっているのかなと思いました。音楽のみならず多方面に芸術的センスを磨いていくことで、最強のアーティストになってしまうのでは…。

これからもずっとこんな風に生きていきたいです。この思いが冷めないでほしいです、僕は。

僕は将来もずっと音楽を続けたいです。本当に遠い将来になると思いますが、音楽で必ず証明して見せたいです。

「クールになるくらいなら死んだ方がまし」を座右の銘にするジョングクの、この力強い言葉よ。ジョングクってどんな人なのか、作品を通して知っていけることをこれからも楽しみにしてます。

 

【RM】

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あの時が、パズルがぴったり合った瞬間だというか。いくら走ったって、あの雨雲より速く走ることができると思うのか?無理だ、そう思いました。キム・ファンギ先生の言葉の通り、僕は韓国人だから韓国人以上のことはできないとも思いましたし。

雨雲の境界まで走ろうとした出来事から、「 “結局人間” が、今の自分にとって適切」と悟ったというナムジュン。熾烈に走ってきたこれまでを振り返り、遠い将来を意識して今の立ち位置を探していることについて語ってくれました。短編小説を読んだような感覚をもらえる、ナムジュンのインタビュー。作詞はもちろん、話の中でも蓄積した言葉や風景を今伝えたいものと接続して取り出す能力が発揮されているのが、ナムジュンのすごいところだと思います。

『BE-hind story』ではインスピレーションの元はどこかという質問に「いつもレーダーを開いておく」と答えていました。長く作詞を続けていたから、自然に日常の中で言葉や風景をキャッチする癖が備わったと。ボンボヤNZ編でテヒョンが言った「天の川があるのを信じてなかった」という感嘆の言葉をヒントに〈Inner Child〉の歌詞が生まれたエピソードからもそのことがよくわかりますよね。

 

創作をする人たちの一生や、創作過程を通して、世の中を見つめる眼が養われるような気がします。画家はとても長い時間にわたりアート活動を展開するので、長いスパンで世の中を見つめられる眼を、持たせてくれるのではないかと思います。だから最近は、歌詞を書くのが、とても難しかったりもしますね。とても慎重になって。

今は根気よく、ひとつのことについて深く根を張る時間ではないかなと。そこで一番確実なのは運動で、今僕の気質をずいぶん変えていると思います。1年、2年と運動が蓄積されれば、ちがう人間になっているのではないかという期待を持っています。

ワールドツアーがキャンセルになり、「デビュー以来初めて “日常” というものができた」と話していたナムジュン。コロナ以降、ナムジュンに限らずグループ全体がこの先のアーティスト活動を見据えた蓄積をより意識するようになったような印象を受けました。それは “日常” が得られたおかげでしょうし、個人的には記録的な部分よりも大きな収穫じゃないかと思ってます。韓国のアイドルにとって30代以降のグループ活動はまだ大きな課題で、バンタンがロールモデルにできる存在はいないように思えるので、徐々に彼らが空白期間の先を思わせる発言をするようになったことには安心感を覚えてます。〈BE〉の製作を通したアーティストとしての成長が、長期的なグループ活動への自信に繋がっているならとても嬉しい。

 

あとで振り返った時、本当に僕の声で出されたこの言語と音が、聴覚的にでも視覚的にでも、でなければ、ただ本当に全体的な人生としてでも、残響と余韻をたくさん残せたら嬉しいです。

だから僕をこの世代の中に溶け込ませようとしていますし、自分と同世代の人たちはどんなことを考えているのか、悩んで熱心に働いて、彼らに迷惑をかけない範囲で、この悩みを曲に盛り込もうと思っています。こんなこと自体がアイロニーだと感じたりもしますが、ただこれが自分で。自分はただの韓国の27歳だ。そんな感じです。

デビュー当時から「若者の代弁者」であることを意識した作品づくりをしてきたバンタンにとって、“成功者” と呼ばれるようになった自分たちの語り口は大きな悩みになったと思います。〈Not Today〉の時には既に「成功した(韓国社会における)マジョリティであるBTSは “ガラスの天井” というキーワードを使うのにふさわしくないのでは」という議論があったようですが、今はその頃よりもずっと慎重になっているはず。世界中どこでも顔を知られているスターであることと、日常に寄り添う友人であることを両立するのはとても難しく、それがどんなに孤独な挑戦なのかは想像もつきません。

何かを成し遂げたように見える人に「僕たちもできたから、あなたも当然やり遂げられるよ」と言われても僕は信じる方ではありません。複雑なさまざまな理由で苦しんでいる世界のすべての若い世代に「できますよ、がんばりましょう」と単純に言うのは無礼かもしれないと思います。ただ僕が言いたいのは「それでも希望がある」ということ。人生は予測不能で不確かなものですが、だからこそ生きる価値があり面白いのだと考えています。*4

ジミンも〈BE〉のコンセプト会議の際に「単純な慰めの言葉では、逆に傷つけることもあるかもしれない」と気にかけていたことが思い出されます。*5 すべての人に等しく届く言葉は存在しないことをいつも意識しているのが、バンタンの誠実さだと思います。一人の人間が見られる景色は限られているけれど、自分たちのストーリーを見せることで共感を生めるのがアイドルという職業の利点。世代や生きる環境が違う人たちとバンタンのストーリーを通じて繋がれることを嬉しく思うし、“韓国の27歳” であるナムジュンに見える景色を覗かせてもらえることが私の幸せなんだと改めて思いました。

 

【SUGA】

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今年(2020年)、性格もだいぶ変わりましたし、人生に対する解釈や態度もだいぶ変わりました。予行練習をしたように思えるほどです。僕の行くべき公演会場がなくなったらどんな気持ちだろう、もし誰にも呼ばれなくなったらどうしよう、そういうことの大切さをすごく感じました。

「予行練習」というのはアミにとってもまさにそうで、ユンギのいなかった数ヶ月間は近い将来のための訓練をしている気分でした。正直、ただただ「寂しい」ということしか学べなかった気がしますが。

〈D-2〉のリリースを始めとした上半期の精力的な活動に、肩の手術。ユンギは7人の中でも最も激動の一年を過ごしたメンバーと言えます。変化をよいものとして受け入れられるようになったと話すユンギ。私が感じた〈D-2〉のテーマは「変わったことと変わらないこと」なのですが、〈あの月〉の歌詞にあるように「変わらないものがある」と確信を持てたから、躊躇なく変化できるようになったんじゃないかと想像しました。

 

まだ幼い頃は、「自分のせいなんだろう」と思って生きてきたんですが、もう少し年を取ってみたら、必ずしも自分だけに非があるわけではなかったんですね。自分のせいだ、自分が至らなかったと思ってきたことのほとんどが、そうではなかったんです。逆によくできたところもありますし、運がよかったところもあります。

歳を重ねて社会を知り、生きてきた環境を俯瞰することで「自分の非ではなかった」と気づくようになるのは自己愛を育てるための大切なプロセスだという気がします。アミになって以来、自己愛と社会的意識の密接な関係性についてより強く意識するようになりました。高い地位に上りながら、ずっと奢らずにいられることも、この広い視野が備わっているからなんでしょうね。

どれだけ大きい賞か分かっていますし、いただいたらとても感謝すると思いますが、それはこの全てがファンの皆さんのものすごい努力のおかげでできたことだからです。僕たちが何かいい賞をいただく度に、僕たちよりもっと喜んでくださるので、そこがとても重要なんですね。みんな嬉しいけど、さっさとやるべきことをやろうという雰囲気です。これまでの間、元の場所に戻る訓練をしてきましたし、浮かれるようなメンバーもいませんし。

先日のグラミー賞でも、バンタンはアミを喜ばせたい、アミはバンタンを喜ばせたいという気持ちでお互いに受賞を願っていたようで、受賞を逃してもその気持ちを共有できた感覚が私を幸せにしてくれました。

「元に戻る訓練」という言葉で思い出したのは、2017年に初めてビルボードでトップ・ソーシャル・アーティストを獲ったあとのパンPDの言葉です。初受賞直後のミーティングで「君たちが幸せになる方法を探さないといけないんじゃないか。このまま生きていたら不幸にならないか心配だ。音楽をやることが幸せで始めただけなのに。」*6 と話したパンPDは信頼できる人だと思えたし、このような “訓練” が7人を守ってきたのだろうと改めて思いました。

 

僕は音楽を長く続けていきたいですし、そのためには韓国だけではなくアメリカや日本、ヨーロッパなど、どこでも愛される音楽をしたいので、そういうところが気になってきました。

非常に、音楽を続けたいです。音楽をしていらっしゃる方々とたくさんお話をしました。大先輩の方々もいらっしゃるし、現役のミュージシャンの方々もお会いし。その方々と話をしていたら、僕って音楽が本当に大好きなんだって改めて思い知らされました。僕の本業は音楽で、これをやらない姿が想像できません。僕に今でもできる音楽が残っていることに感謝しています。

ユンギの持つプロデューサーとしての商業的な視点は、グループの大きな強みですよね。『BE-hind story』で〈잠시 / Telepashy〉の尺について話していたことも印象に残ってます。リスナーが飽きないよう音源版は3分以内に収めて、CD版には40秒長いバージョンを収録。(CD版だけに入っているジミンのハミング部分、大好きなのでありがたい…)あと〈Stay〉のラストの無音部分も音源版は4秒短く、間髪入れずに〈Dynamite〉へ続くんですよね。大衆を意識した創作と内向きのサービスを両立しているところが好きだな、と思ったエピソードでした。

〈MOTS:7〉のリリースはプレッシャーが大きかったけど、今回はコンセプトもなく成績も気にせずに気楽に音楽ができて楽しかったと話すユンギに嬉しくなりました。「すべての権限を渡された」と言うように、完全に決定権をメンバーへ託す選択をした事務所に感謝です。

そうして変化し続け、進化していく必要もあると思います。今後、数十年間音楽を続けるわけですから。

2017年のユンギがグループの将来について「停滞することなく進んでいてほしい。ゆっくりでいいから。」と話していたことを思い出します。*7 誰かが停まってしまった時は誰かが進んで、お互いに手を引きながら常に進んでいけるのは、全員が音楽への情熱を持ち続けてるからなんでしょう。皆が「ゆっくりでいい」と思っていてくれるといいなと思います。空白期間のその後も人生はずっと続くし、失うものがあったとしてもそれが即ち”停滞”ってわけじゃない。〈BE〉の活動期間を通して、この先のアミ人生がちょっとだけイメージしやすくなった気がしました。

*1:BREAK THE SILENCE : DOCU SERIES』6話

*2:2020年12月3日 BANGTAN BLOGより https://btsblog.ibighit.com/406

*3:2020年12月4日 VLIVE https://www.vlive.tv/video/226668

*4:2021年3月13日 『NEWS ZERO』インタビューより

*5:BANGTANTV 2020年5月11日「2004** BTS」より
https://www.youtube.com/watch?v=D7HPWv4apDA&t=8s

*6:2019年『Burn the Stage: the Movie』よりhttps://www.youtube.com/watch?v=YgG9f4MJ1eU

*7: 2018年3月『Burn The Stage 』1話 https://www.youtube.com/watch?v=j6zWwAoEi_w