Things I Didn't Know

BTSと韓国ミュージカルが好きです。

【観劇レポ】フランケンシュタイン 2/6 チョン・ドンソク・チェ・ウヒョク

※こちらは公演の詳細なレポになります。作品自体のあらすじと感想につきましては下記記事をどうぞ!

 ひと月ぶりのフランケン。
やっと念願のドンソクビクター×ウヒョクアンリを観に行って参りました。

◆2月6日ソワレ

[ビクター/ジャック]チョン・ドンソク
[アンリ/怪物]チェ・ウヒョク
[エレン/エバ]ソ・ジヨン
[ジュリア/カトリーヌ]アン・シハ

◆◆◆

ドンソク×ウヒョクペアは10月にあった初お披露目のガラコンサートで「たった一つの未来」を歌ったり初日にもペアを組んでいた最年少コンビ。そもそも私がウヒョクくん落ちしたのはガラコンサートの動画が原因で、厳密に言うと歌終わりに緊張の面持ちのまま大きく息をついてドンソクさんに頭を撫でられた瞬間に顔が綻ぶところなんですけどそんなことは誰も聞いてないですよねすいません。いや正直それまで写真で見てた段階では1ミリも心動いてなかったんですけどもうとにかく澄まし顔と笑顔にギャップのある人に弱いので笑った瞬間一発ノックアウト感ありましたし、しかもこの顔にこの歌声かよ!とかリハーサルでマイクトラブルがあった時の不安そうな顔とか色々あるんですけどほんとにすいませんもうやめます。

とにかく、歳が近くて仲良しなドンソクさんとの公演は大変楽しみにしておりました。しかし如何せんこのペアが観られるチャンスが少なく、ここに来てやっと叶いました。

なんせまずウヒョクくんの登板回数が少ない。ちなみにフランケン再演の4ヶ月間、全151回のうちキャストそれぞれの出演回数は次の通りでした。(ウンテさん体調不良によるキャスト変更含む)

ユ・ジュンサン  40回
パク・コニョン  60回
チョン・ドンソク 51回
パク・ウンテ   56回
ハン・チサン   61回
チェ・ウヒョク  34回

うちウヒョクくんの組んだビクターは

×ユ・ジュンサン    8回
×パク・コニョン  12回
×チョン・ドンソク 14回

ジュンサンビクターとの組み合わせはかなりレアでしたね。ウヒョク×3ビクター制覇したかったけど、そこがネックでした。最早マッコンも済んでしまったし。年齢が倍ほどもあるので友達というより親子のようだったというふうに聞きました。

◆◆◆

まず今回、指揮者が作曲家で音楽監督のイ・ソンジュンさんでした。4回目にして初めてソンジュンさん指揮の回にあたったのですが、本当に役者と息がぴったり揃っていて緩急の付け方も絶妙で、特にドンソクさんは前回観た時よりもかなりのびのびと自由に感情を乗せて歌っていた印象です。この日はドンソクさんのお誕生日だったこともあってか、ものすごく歌唱に熱が入ってました。ウヒョクくんも、それが1ヶ月を経ての成長なのか指揮のおかげなのかは定かでないですが、先月観た時よりも明らかに歌が良くなっていて、2人とも全体的に熱量の高い公演でした。    

◆◆◆

《たった一つの未来》のウヒョクアンリは前より表情が増えて、後半に武者震いのような笑み。ビクターと握手するところも一瞬ついこぼれてしまったみたいな笑顔が。そしてビクターに「お願いだ、友よ」されたあと、ふらっと一歩後ろによろめいてましたね。落ちたんか…落ちてしまったんか…。《だけど君は》では、前回観た時以上にものすごく幸せそうに笑ってて…うん…落ちたんだね。エレンの回想で幼いビクターがお母さんの遺体を持ち帰ったところも、よりビクター少年への感情移入度を高めてて、よろめくようにベッド脇に跪いてた。

◆◆◆

で、酒場ですよ。

今回でドンソクビクター×3アンリを制覇したわけですが、酒場はドンウン=母子/ドンハン=友達/ドンニュ=恋人  という巷の評判には完全同意でした。こんなに違うものなのか~楽しいねトリプルキャスト。

ウヒョクアンリはふら~っと入ってきて、なんか乱闘起きてる?え?そこでもみくちゃになってるの、もしかしてビクター?「ちょっと待って下さい、ちょっと待って下さい!」って感じでした。ここね、ずっと気になってたんですけどこの飲み屋を見つけるまでにアンリ結構この界隈を捜索してるよねきっと。ビクターは「ルンゲに聞いたのか?私がここにいるって」って言ってるけど、ルンゲには聞いてなかったし、きっと地道に一軒一軒覗いて探したんだろうに特に何も言わず「君がこんなに酔ってるとこ初めて見たよ」って返すとこが良いですよね。できた子だな~~~(モンペ)

ていうか「ルンゲに聞いたのか?私がここにいるって」ってどういうことなんでしょうね?この酒場がビクターの行きつけの店だったとは思えないしな。主人も客も全然ビクターのこと知らんぽかったし、ビクターが酒好きだとしてもいるだけでピリピリしてしまうようなジュネーブで飲み歩きはしないだろうし、しかも大衆居酒屋なんかに一人で行くタイプじゃないし(まぁ、この日は城から出たかったんでしょうが)、多分そんなことしてたらすぐ人に喧嘩ふっかけて出禁になってただろうから、普段は城でルンゲに買ってこさせたお酒を飲みながらアンリにぺらぺらと生命創造の野望を語って聞かせてるんですよきっと。何回も同じ話ばっかりする酔っ払いビクタ ーに根気よく付き合ってあげるアンリ優しいな~~~(モンペ)

そもそもこの時点で、ビクターがジュネーブに戻ってきてどのくらい経ってるのかがよくわからない。フランケンシュタイン城に移ってから墓を掘っては頭を調達して実験してたっぽいし、アンリも「ジュネーブに来てから―」って言ってたし、しばらく経ってると思うんだけど、ビクターが戻った日にジュリアに「ビクターには私が会ってくる」と言ってたエレンはこれまで何をしてたのか?って感じですよね。実は何回も会いに来てたけど取り次いで貰えなかったとか?そこらへんの細かい設定に結構矛盾があるような気がしますね。

まぁそれは良いとして、ビクターがアンリに当たり散らすくだり。「どうやって新鮮な脳を探す?殺人もせずに」って言いながら不敵な笑みでウヒョクアンリの頬から顎を撫でるドンソクビクター。この台詞をここまでダイレクトにアンリの首を使うことへの伏線にしてるパターンは初めて見ました。このビクターの不吉な冗談はきっとアンリの頭に焼きついたでしょうし、それを意識して身代わりになった線が濃くなるので私は好きです。

ビクターがテーブルの上で騒ぎだすところ、苦笑いで周りの客たちに「すいません、うちのがうるさくてすいません」的な顔を向けるウヒョクアンリがすごい妻感。「自分の意志が通せない。何かに魂を飲み込まれるみたいだ」とうなだれるビクターを下から覗き込むように「一杯やりますか?」。そしたらドンソクビクターがもう思いっきり眉尻を下げて、嬉しそうなホッとしたような顔をするんですよね。ビクターって嫌味を言ったりわざと狂気を見せたりして突き放すことで他人の自分に対する愛を試そうとする不器用な人で、ずっとそういうやり方で人を遠ざけてきたんだろなって感じがするんですけど、アンリがそこを乗り越えてくれて安心したんだろなと思いました。アンリにとって自分は優れた研究者であること以上の 価値はないのではないかと思ってたから「私ビクター・フランケンシュタインもほんのつまらない人間だということを確認したかったのか?」とか自虐的な嫌味を言ったのでしょうしね。

ウヒョクアンリの下戸設定もより強調されてて、一杯目呑んでわかりやすく顔をしかめてて超かわいい。もうとにかくアンリの一声で一気に心が溶けたという感じで、ビクターに注がれた酒を呑むアンリをとろけそうな笑顔で見つめるドンソクビクター。呑めないアンリが頑張って付き合ってくれるのが嬉しくてしょうがないって感じで、「待って待ってそんなに呑めない」って素振りをするアンリを無視してどんどん注ぎ足す。仕方なくまた呑むアンリ。ビクター、アンリのジョッキを覗き込んで「まだ残ってる、呑め」って呑ませてきゃっきゃ笑いながらさらに瓶ごと全部注ぎ足す。完全なるアルハラだ!ウヒョクアンリが倒れたらどうしてくれる!

アンリ目をぱちぱちさせながら、立ち上がる。足元がおぼつかないしテーブルに登る時もよいしょって感じ。ふわふわしながら「ただ一人の友がいるということ それ以上何が必要だろう」。ドンソクビクター胸でハート作る。アンリもそれに応えて頭の上で大きくハート。(韓国の人がよくやるおさるポーズみたいなやつね)(かわいい)「うふふ」って笑って踊り出すアンリ。はい、酔っ払いました、酔ったから踊っちゃいますよ、みたいな前置きがないと踊れないんですよね?そうですよね?(かわいい)二人で床に降りる時は、自分もふらついてるのにちゃんとビクターをエスコートするアンリが健気で泣ける。どうする?踊る?踊っちゃう?って目くばせして踊り出す二人。

とにかくこの酒場のくだり二人の息がぴったりで、中の人の仲の良さが滲み出てるって感じです。ハングルでレポ探してると少し前のドンニュ回では結構アドリブも入れていて、

ビクター:「お前ら全員やっつけてやる、俺の友達はボクシングできるんだからな」
アンリ:「(ビクターに)黙ってて!」
(※ウヒョクくんは昔プロボクサーを目指していた)

とかいうネタを挟んできたりしてたようで、このシーンは演じても楽しい部分なんでしょうねー。最近は全ペアアドリブ無しになってるようですが。ちょっとやりすぎましたね多分。

ルンゲが頭調達のニュースを持ってきて「葬儀社!!」と声を合わせて歓喜するふたり。ぴょーんと飛びついてきたウヒョクアンリを抱き止めてくるくる回すドンソクビクター。結婚式かよ!ほら、昔縁日とかで売ってたビニールの抱きつき人形あるじゃないですか。ああいう感じです。ジャンピング抱っこちゃんです。話には聞いてたんですけど実際観るとすごい破壊力でしたね。結婚式かよ!(2回言いました)

コニョンビクターとの組み合わせだと「ただ一人友がいれば」のところでもコニョンビクターは何の反応もしてなかったし、ひたすらアンリばかりがビクターを気遣っていて、ビクターがアンリの献身的な愛に気付いた時にはすでに手遅れだったという感じで、どちらかというと私の中のビクター像といえばそっちに近かったのでそれも好きなんですが、ドンソクビクターはこの時点ですごくアンリのことを好きなのが伝わってくるので、余計にこのまま何事もなければビクターはトラウマを払拭して普通に他人を愛せる人間になれたんじゃないかっていう、悲劇感が強くなりますね。

◆◆◆

《君の夢の中で》は前回観た時とはかなり変わってました。

「面会だ」と言われ牢に誰か入ってきた足音でそれがビクターだとわかるのですが、うまく顔を見ることができないという感じで背を向けたまま必死に平静を装った声で「来てくれたんだね」を絞り出します。ビクターの声を聞いて振り向こうとしますがやっぱり駄目で、ずっと背を向けたまま声だけは淡々と。顔を合わせたら決意が鈍ってしまうと思ってるんでしょうか。ものすごく葛藤の伺える表情でした。「だけど君が死刑になったら!」でようやくビクターと向き合って、もうそこからは毅然とした表情と口ぶり。前回観た時は「僕の代わりに生きてくれ」からもう泣いてて、歌も序盤は涙声だったのですが、この日はずっと力強く諭すような声で 歌いかけてました。今日のウヒョクアンリは強い…歳の近いビクター相手だとこうなのか…?と思ってたら、連行されるところ「君と共に」で振り向くと顔を歪ませて泣いていて、やっぱり全然けんちゃなじゃない顔で「けんちゃな、へんぼっけ(大丈夫、幸せだ)」って言ってて、泣きました…。

◆◆◆

1幕終盤では誕生した怪物を抱きとめるビクターがほんとに大事そうに確かめるように抱きしめて頭を撫でていて、もうここでハッピーエンドでいいじゃないか…そうしようよ…って感じでした。ここらへんからドンソクビクターは一気に子供返りしたような表現が増えて、「アンリが生き返った、僕が生命を創造したんだ」ってところはぬいぐるみを抱えた子供みたいなイメージ。怪物の首を絞めるところも壊れたおもちゃは処分しなきゃっていう子供の真っ直ぐな残酷さみたいなもの感じるというか。少年のまま時が止まっちゃってる感じがこのへんから一気に出ていて、もうなんだ、好きなんですよねドンソクさんのビクターが。

そしてドンソクさん、1幕ラストの「あんでーーー!」のあとのシャウトがこの日凄かったです。まだ伸びるの!?っていう。こういう大型ミュージカルって1幕終わりやラストシーン、複数のキャストとアンサンブルが曲を盛り上げて幕が下りるパターンが多いのですが、フランケンは1幕2幕ともに最後の締めくくりをビクターが一人きりで引き受けていて、そこにもビクターの孤独を感じます。この日の1幕終わりは特に大きな拍手と共に暗転してました。図らずもドンソクさんのお誕生日公演に入れてラッキーだったな。

◆◆◆

2幕。

結構隅々まで好きなフランケンですけど唯一解せないのが《行方不明》で出て来る「不吉な月明かり!」ってきゃっきゃ言ってる魔女みたいな人。(プログラムによると"Crazy Woman")誰なんだ彼女…なんなんだ…。意味ありげに出て来るけど特に意味はない感じがもやっとしますね。いや全然いいんですけどね。

《逃亡者》のウヒョク怪物、「"なぜ帰って来た"?"何を望んでいる"?」のところで前以上に狂ったように笑ってた。怪物はこの時点でもうシュテファンを殺していて、しかもご丁寧にシュテファンの財産文書まで偽造かなんかしてエレンを罠にかけているんですよね。どういう方法でかはわからないけれどビクターとその周辺のことはきっちり調べあげてから実行した計画なわけで、もうビクターがどういう奴かってことはある程度わかってるはずなんですよ。だけどやっぱり面と向かって冷たい言葉を吐かれて傷つくのは、どこかにまだ親としてのビクターを望む気持ちがあったからなんじゃないかなー

◆◆◆

ジュリア/カトリーヌのアン・シハさん。ほんと、大好きです…。そういえば最近になって2012年に『アイーダ』でアムネリスを演じるシハさんを観ていたことが判明した…。しかし残念ながらあまり印象に残っていない…当時役者の名前なんか全然知らなかったんだよ~。

シハカトリーヌの《そこには》冒頭がすごく好きです。カトリーヌは実際のところ北極の存在を信じてなかった気がする。いや信じてたとしても決して行けないってことはわかってるし、とても現実的ではない単なるおとぎ話みたいな感覚で話し始めるんですけど、そしたらあまりにも怪物が神妙な面持ちで真っ直ぐに北極に焦がれるから、だんだんカトリーヌの憧れも溢れ出してくるみたいな。メロディも良いし、好きな曲です。

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ウヒョク怪物の《私は怪物》、前回観た時に「自分の魂を閉じ込めてるのが知らない身体だと気付いて抜け出そうともがく」みたいな表現だったと書いたんですが今回それがより強調されたお芝居になってた気がします。まず手首の傷に気が付いて、これは一体何なんだっていう顔をして、首の傷を触ってその首を自らもぎ取ろうとする。怪物はもう既に言葉も取り戻していて、ここからどんどん自分がアンリだった時の記憶も戻るようですが、そうなればなるほど「これは自分の身体じゃない」って意識が生まれるのかなと思いました。

前回はなかったのが、《絶望》でアンリが戻ったかのような表情があったところです。ドンソクビクターが「私を焼き殺すのか いっそ私を引き裂いて殺せ」と縋るところを相手を敵だと思ってるようには見えないくらいの情けない表情で泣きつくので、それを受けてなのか、その時だけ怪物の表情が消えるんですよね。すぐさま怒りの表情が戻って突き放すんですが。怪物は実験室に戻ってきたことやビクターと対峙したことをきっかけに徐々にアンリの記憶を取り戻すのかなと思っていたので、ここで怪物の自我が一瞬消えるの、すごく良いと思います。

ビクターは戻ってきた怪物にも「アンリ」と呼び掛けるし、ここに至ってもまだ「ここで夢を見た 君と一緒に」って言うし、生まれた生命がアンリの意識を持たないとわかるやいなや殺そうとしたにも関わらず完全にアンリを手放すこともできてない矛盾がすごく歪に感じるのですが、そんなビクターの態度が怪物の中のアンリを呼び覚ますきっかけになったのかもしれません。

◆◆◆

《傷》の終わり、「あの世界の果て…そこに…"幸せ"…そんなものがあるのだろうか」と言ったあと、どこへともなく「あんにょん」の手をするウヒョク怪物。

怪物の中で平和と自由のある北極への憧れは、カトリーヌが教えてくれたぬくもりと対になっているんでしょうか。「あんにょん」を教わった怪物は、エバとジャックに「お前は怪物なのだから"人間のふり"をするな」と言われます。神になりたがったけどただの人間だったビクターと、人間になりたかったけれどなれなかった怪物。幼いビクターに「君も大人になれば"人間のふり"をするんだろう?そうはならないで」と言った怪物ですが、その後に「あんにょん」と手をふって"人間のふり"をしてみせるのは、やっぱり自分も人間になりたかったという気持ちの表れなのかもしれません。人間だとか怪物だとか、そういう枠組を全部捨てるために怪物は北極に向かったのかなと思います。

湖のシーンでは、夜空に月が浮かんでいます。

《絶望》で怪物は「あの満月が裂ける時に戻る」とビクターに予告するのですが、歌詞を読んでいた時点ではこの"満月"は「まだ私の目にはお前が満ち足りた人間に映る」という怪物の歌詞からビクターの慢心を意味するものなのかなと思ってました。だけど実際舞台を観るとこのシーン「あの満月」って言ってるにも関わらず月は雲に隠れて見えないんですよね。湖のシーンで姿を現すのは上弦の月です。ジュリア殺害の夜が「満月が裂ける時」だったならその後の湖のシーンには下弦の月であるはずなんですが。上弦の月はこれから満月に向かって満ちていく月なので、これは怪物の中でアンリの意識が増して行く状態を示しているのかなと思いました。《君の夢の中で》でアンリがビクターを太陽に形容したことにも関係があるんじゃないかと思います。

◆◆◆

北極でのウヒョク怪物、ビクターに銃を向けるところまではまだビクターに憎悪を抱く怪物が出てきているのですが、銃を渡すところはアンリの静かな表情で。「君は一人になったんだ。一人になるという悲しみー」と言いながらビクターににじり寄る瀕死の怪物に、ビクターは後ずさりするのですが「ビクター」とアンリの声で呼ばれてぴたりとその動きがとまります。その後のビクターはどんどん手からこぼれ落ちるものを拾い集めようとするみたいな必死の表情でした。

ジュリアが殺されて、すでに何もかも失ったはずのビクターはなぜ「地獄のような寒さに耐えて」北極まで怪物を追ってきたんでしょうか。ジュリアの死後、呪い続けたはずの神に「許されない私の失敗を 神がおられるのなら聞きたまえ」とついに懺悔するビクターは、すべてを失ってもまだ独りになることを受け入れられなくて、怪物さえ殺すことができれば、自分の過ちを清算して神の赦しが得られると思ってたのかもしれません。結局は誰よりも神の存在に依存していたんだろうなと思います。だけど怪物が死んでも、一番神に近いはずの「最も高いところ」から叫んでも、声はむなしく響くばかりで誰にも聞き届けられない。ドンソクビクターは独りになったことというよりは、自分が本当に懺悔すべきだった相手に二度と声が届かず赦しを得られないことを嘆くようでした。1幕でアンリを大切に思っているようにみえたドンソクビクターだけに、何よりもアンリ/怪物への申し訳なさが伝わってくるラストでした。

◆◆◆

フランケンはとにかくすべての要素がビクター・フランケンシュタインという人間を物語ることに繋がっているところがすごく好きです。ついつい怪物中心に観劇してしまうのですが、今回はドンソクさんの歌と芝居に特に熱が入っていたのもあってビクターの心の動きに入り込みやすかった気がします。千秋楽を迎えたあとには役について語ってくれる機会もあるのかな?ドンソクさんの役の解釈についてじっくり聞いてみたいですねー。

ウヒョクくんの表現の幅が広がっていることも確認できたし、満足な公演でした。とにかくどう見てもウヒョクアンリと一番相性の合うビクターがドンソクさんであることは間違いないですね。私がこのペアを観られるのはあと2回ですが、最後まできっと進化を続けてくれるだろうと思います。次の渡韓まで仕事がんばろー。