Things I Didn't Know

BTSと韓国ミュージカルが好きです。

BTS『MAP OF THE SOUL : 7』全19曲ちょっとずつ感想

待ちに待った10ヶ月ぶりのアルバムのリリースからちょうど1ヶ月!

f:id:ozmopolitan-cc:20200321204054j:plain

この1ヶ月めちゃめちゃ聴きましたが、血汗涙が注がれていて、7人の魂にふれられる一枚だという気がします。一つのストーリーラインに沿う形でつくられた『Love Yourself』シリーズも大好きですが、今シリーズでは全員が作詞・作曲に関わっていることもあり、より自分たちの中から出た言葉を使って7人の心が表現されており、「魂の地図」ってタイトルを掲げるだけあると思いました。

ということで1曲ずつ歌詞について考えながら自分で和訳してみましたので、『MAP OF THE SOUL :PERSONA』より再収録の5曲も含めて、19曲それぞれの感想を書いていきます。私は音楽のことは「かっこいい〜」「すてき〜」レベルでしか語れないので、歌詞について考えたことがメインになります。1曲につき好きな歌詞を1箇所チョイス+ちょっとずつ感想です。

 また全訳を公開するほど韓国語に長けているわけではないので、他の部分の歌詞が気になった方は他の方のブログなどを参考にしていただければと思います…!


■ Intro : Persona


俺は誰なのか ずっと問い続けてきた質問
多分一生正解が見つからない その質問
もし一言二言で答えられるものだったら
神様はあの幾多の美を
盛り込んでくださらなかっただろう

ナムジュンが自身の中を覗き込み、自分のペルソナを分析しながら語りかける曲。シリーズが完結したあとに改めて聴いて、導入に相応しいフレーズだなと思いました。はじめから「正解は見つからない」と教えてくれるわけですから、これはあくまで地図であって旅の終着地が提示されるものではないんだってことを理解したうえで入っていけたような気がします。

この曲についてはもうちょっとだけ語りたいことがあるんですが、〈Respect〉で語られることと共通する話なので、後ほどそっちにまとめることにします!


■ 小さなものの為の詩 (Boy With Luv)


僕はあの空を高く飛んでる
あの時 君が僕にくれた両翼で
もうここは高すぎる
僕は君とこの目を合わせたい

この一年鬼リピートしたにも関わらず今でも全然飽きずに聴き続けられる、きもちの良い歌!こんなに幸せそうに、楽しそうに歌うタイトル曲は他にないですよね。普段の自然な姿のまま歌ってる感じが良いです。

BTSは世界のあらゆるランキングで記録を更新し続けているわけですが、ファンに会って音楽を届けることや、SNSなどを介した些細な疎通を何よりも大切にするところが好き。シリーズを最後まで聴くと、結局BTSが活動を続ける理由はこの「小さなもの」にあるんだってことがよくわかって、余計に好きになりました。


BTS (방탄소년단) '작은 것들을 위한 시 (Boy With Luv) (feat. Halsey)' Official MV


■ Make It Right


前よりも少し大きくなった背で
もっとしっかりとした声で
すべては君のもとに帰るため
今 君という地図をいっぱいに広げるよ My rehab

〈Boy With Luv〉に続き、高く上りつめた彼らが今望むことを歌う曲。MOTSシリーズが“リブート”をテーマにしている理由がここにあるのかなと思います。原点に帰ったうえで、今できるやり方で一人ひとりを癒やす音楽がしたいっていう。ビッヒの掲げる “Music&Artist for Healing”、MVの冒頭に出てくるたびに「ほんまそれ…」ってしみじみしてしまいます。


■ Jamais Vu


大丈夫だけど 大丈夫じゃない
慣れていると独り言を言ったけど
いつも初めてのように痛む

ジン、ホソク、ジョングクのユニット曲。この3人がどうしてこのテーマで歌うことになったのかはわからないですが、いつも笑顔でファンを幸せにするために全力で努力する人たちが吐露する痛みや怖さ、受け止めるのは簡単じゃないですね。


■ Dionysus


ぐっと飲み干せ(創作の苦痛)
一口(時代の怒号)
ぐっと飲み干せ(自分との疎通)
一口(Okay now I'm ready fo sho)

〈ON〉で語られる「狂わないためには狂わなきゃいけない」の部分がテーマになっている曲だと思います。初めてこの曲のパフォーマンスを観た時、アーティストとしての苦痛をこんなふうに吐き出せることも、それをエネルギーに替えて圧倒的な熱量のステージをつくれることもすごい、BTSすごいって震えました。


■ Interlude : Shadow


一番どん底の自分に向き合う瞬間
あいにくここは青空じゃないか
Please don't let me shine
Don't let me down
Don't let me fly
今は恐い

自身の暗部を掘り下げて言葉にできるユンギの凄さ。ストレートな「恐い」って言葉が刺さります。でも最後には「お前は絶対に俺を引き離すことができない」と受け入れるんですよね。

ちょうどナムジュンも好きな歌詞としてあげていましたが、「あいにくここは青空」という言葉選びが好きです。最近まで「青空」がいまいちわからないままだったのですが、雲ひとつない青空を背景に踊る〈ON〉のKinetic Manifesto Filmを見て、青空とは自分たちのありのままを炙り出されるような場所なのかなと思いました。一歩間違えると転落してしまう恐怖と、ずっと向き合っているんですね。


■ Black Swan


耳元には速い心臓の音だけが
bump bump bump
両目を開けて自分の森へ
jump jump jump
何も俺を飲み込むことはできない
力の限り俺は声を上げる

創作の苦痛にもがく中で、自分の影に出会い、向き合う過程が描かれた曲。アーティストとして抱える恐怖は、きっと注目が集まるほどに強くなるんだろうと思うと心が抉られるようです。ですがこの曲も然り、影について語られる曲の中では必ずそれに向き合うところが表現されていて、今のBTSの力強さが現れていると思いました。遅くなった心臓の音が、一番深い所で自分に会ったあとにまた速くなり、ついに声を取り戻す…というこの部分の歌詞が好きです。


BTS (방탄소년단) 'Black Swan' Official MV


■ Filter


パレットの中の色を混ぜて pick your filter
どんなぼくを見たい?
君の世界を変化させる I'm your filter
君の心に被せてよ

この “ファン一人ひとりが選ぶフィルター” って考え方はまさにアイドルの本質を突いているように思えます。あくまでフィルターの奥にいる自分は見せない、少し皮肉の効いた曲。ソロの中で唯一自身が作詞に関わっていないというのも、この曲のテーマに即してる気がします。だけどテーマ自体は本人の希望をもとに決定されているはずなので、最初にどんな話し合いがあったのかが気になる!

「いつも同じだと面白くないじゃん」って歌詞も、くるくるとビジュアルを変えるジミンらしい。唯一無二の新しい存在だという自信も良いですね。個人的にジミンは特に「人の期待に応えたい」という思いが強くて、とても上手に “外から見える自分” をコントロールできる人だというイメージがあります。ドキュメンタリーで「ファンにとって芸能人でありたい」って語ってたのも、折に触れて思い出すのですよね。


■ 時差 / My Time


たまに息がつまる時には
帽子を深くかぶって走り続ける
行き先はわからない
たとえ太陽に背を向けるとしても

同年代の人たちが普通に経験する世界とはかけ離れたところにいるジョングクが、見送ってきた自分だけの時間について歌う曲。一番受け止めるのが苦しい曲かもしれません。アイドルとしてのジョングクを消費する自分は、「自分の時間」を奪っている側なわけですから。

この箇所はナムジュンが「ジョングクに憑依したつもりで書いた」とビハインドで話していて、そのやさしさに救われました。日が差す方ではなくても、逃した自分を抱きしめるために走るんだって詞を書いてくれる、ジョングクのロールモデル。チョン・ジョングクの選ぶものを肯定して、見守ってくれるヒョンたちがいることは本当に救いだな。


■ Louder than bombs


人々は俺たちが羨ましいと言う
俺が持つ痛みを偽善だと言う
俺が何をしようと 糞畑に転がる
俺たちでなければ そう 誰がやるんだ?

「君の些細なことを教えて」と語りかけ、ARMYと同じ目線でいることを望むバンタン。人間として向き合おうとする中で、知らなかった他人の痛みに出会って、それが自分の痛みになってしまう。無力感を覚えるけど、少しでもより良い日を届けるために逃げずに向き合う、と語られる曲。

血汗涙を流しながら活動を続けるバンタンの動機になるものが何なのか、この曲を聴いて理解が深まった気がします。知識が経験が積み重なってこそ、人の痛みを知ることができる。本当に「やさしい」「賢い」ってこういうことだなと思いました。


■ ON


Bring the pain
すべて俺の血肉になるだろう
Bring the pain
No fear 方法が分かったから
小さなものに breathe
それは闇の中の酸素と光
俺を俺でいさせるものたちの力
転んでもまた起き上がって scream

やっぱりリード曲!〈Louder than bombs〉からの「痛みを持ってこい お前と共に生きる」と全力で踊るバンタンかっこよすぎじゃないですか?もうほんと駄目。一生ついていく。今いるのは苦痛が耐えない場所で、同時に息つける場所。青空だけど、監獄。でもずっと続けられる理由は「小さなもの」にあるんだよって歌うこのホソクパートが特に好きです。

アイドルソングの歌詞って抽象的な何かと闘ったり、ふんわりした夢や希望を抱きがちなんだけど、バンタンの歌詞は自分たちのストーリーから生まれた言葉だからこそ嘘がない。「俺はファイターだから」と言いながら汗を流して難しい振り付けをこなし、完璧なパフォーマンスを見せるバンタンは本当にかっこいい。しかもパフォーマンスだけじゃなく、普段から人権意識の更新や慈善事業にも取り組むなど、行動が伴ってる。どこまでも本物だって思える人たちなんだよなぁ。バンタン好きになってからずっと「かっこいい」がインフレ起こしてて大変。


BTS (방탄소년단) 'ON' Kinetic Manifesto Film : Come Prima


■ 욱 (UGH!)


お前は俺だけを殺すんじゃない
クソを踏むことには慣れてるんだ 俺らは
無感覚になったあの人々を見ろよ
糞尿 無関心 お前らはチームだ

ラップラ曲最高ーーー!!!怒りはもちろん必要。それが自分たちの歴史だし、社会を変えることもあると、怒りの肯定を歌うアイドルって素晴らしくないですか?一億総評論家なんて言われる時代にトップアイドルとして生きて、抱えた怒りは「有名税だ」と抑えつけられて。誰かのことを知っていると思い込んで無責任に投げつける言葉は、怒りじゃなく“糞尿”であり、自分たちはそれに対してちゃんと怒っていくんだっていう表明ですよね。もー大好きですわ。怒っていくよ。糞尿と無関心はチームだよ。

 

■ 00:00 (Zero O'Clock)


何かが変わるのかな
そんなことはないだろう
だけどこの一日が終わるじゃないか
秒針と分針が重なる時
世界はほんの少しだけ息をのむ
Zero o'clock

ボーカルライン4人のやわらかい歌声と、疲れた心に染み込む歌詞…どうしたって変わらないことはあるけど一回リセットだよっていう、おまじないみたいなこの曲に励まされることがこの先たくさんありそう。0時といえば、ARMYにとっては新しいコンテンツが降ってくることもあるちょっと幸せな時間ですよね。日々走れるのはバンタンのおかげやで…


■ Inner Child


今夜 君に僕の手が触れたら
その手を握ってくれる?
僕が君になるから
君は僕の天の川を見たらいい
あの星たちにあたればいい
僕の世界を君にあげるよ
君の目に映る光は今の僕だから

〈時差〉と同様に昔の自分に語りかける形をとっていますが、未だ置き去りにされているもう一人の自分を想う〈時差〉と異なり、辛かった少年テヒョンが今は満たされていると歌うのがこの曲。あの時の自分が夢みてたのは、今の自分の姿だったんだって言われると、ファンとしてもすごく幸せな気持ちになります。

 

【余談】
ここで使われている「별을 맞다 = 星に当たる/星を迎える」という表現は、〈Answer:Love Myself〉でも「あの無数の星にあたるために僕は落ちたんだろうか」という部分で使われてます。もともとは「星を迎える」と訳してみてたのですが、ちょっと解釈に迷うところがあったので韓国語の先生に効いてみると、あまり他では聞かない独特の表現だから「当たる」も「迎える」もどちらが正解というわけではないとのこと。先生個人としては、「星を迎える」も良いけど「비를 맞다 = 雨にあたる」の使い方と同じような使い方で「星にあたる」と解釈したそう。たくさんの流れ星を身体で受けるような印象を受けたと言っていて、私もそれにすごく納得しました。

ナムジュンはよくアミボムの光を星に例えるし、この2曲でも「星」はその意味でつかわれていると思うのだけど、眺めるというよりは雨に打たれるみたいに身体中で受け止めてる感覚なのかな?だから「矢」と「的」が出てくるのか、とストンと落ちた気がしました。


■ 友達 / Friends


ハロー、ぼくのエイリアン
ぼくらはお互いのミステリー
だから余計に特別なのかな?

ジミンが作詞・作曲に携わったクオズのユニット曲。成人男性がこんなふうに真っ直ぐに親友への愛を言葉にする姿ってなかなか見られるものではないし、すごく素敵です。四次元と呼ばれることもあるテヒョンは、たまにマイペースな発言で会話の流れを変えちゃったりすることもあるんですが、そんなテヒョンを見て愛おしそうにけたけた笑っているジミンの姿が好きで。そういう2人の関係がこの部分に現れていると思います。「Hello, my alien」のジミンの温かな歌声ときたら!

とにかく他の誰のものでもなく、ジミンとテヒョンだけが共有する思い出や相手への想いが散りばめられているところが好き。「いつかこの歓声が止んでも、お互いの傍にいよう」って、そう言える相手がいるから強くいられるんでしょうね。


■ Moon


ふと考える 今君も僕を見ているのかな
僕の痛む傷まで 君に全部ばれてしまうんじゃないかな
君の周りを周るように
君のそばにいてあげる
君の光になってあげる
All for you

〈Moon〉がジンくんのソロ曲タイトルだと知ったときは意外に思ったんですが、歌詞を呼んで納得しました。ファンとの関係性を月と地球に表すのは、とても適切なたとえだという気がします。ジンくんは自分の明るい面だけを見せるために、一定の距離をとったうえで愛を注いでくれる人だというイメージだから。〈Black Swan〉と〈ON〉のジンくんのダンス、今まで以上に素晴らしくて感動したのですが、その裏にも決して見せない多くの汗と傷があるのだろうと思うと一層この曲が染みました。


■ Respect


"Re-spect"
文字通り見て ずっと見て
ずっと見てると短所が見えてくる
それでもずっと見ていたいものは
必要なんだよ その誰かに向けた完璧な信念

「Respect=尊敬する」の語源「re(再び)+ spect(見る)」にかけて、「’尊敬’って言葉の意味をもう一度考えてみてよ」と歌う曲。ナムジュンとユンギがお酒を飲み交わしながら語ったことをテーマにしたそう。コミカルな雰囲気だけど、Presidentと讃えられるナムジュン、天才と崇められるユンギにとって切実な訴えなのかもしれません。

特にナムジュンは〈Intro:Persona〉においても「世の中は関心がない 俺の未熟さには」「自分が犬なのか豚なのか何なのかもまだよくわからないのに人々が来て真珠のネックレスをかける」と無条件に讃えられることへの戸惑いを語っています。ある側面だけを見て過剰に持ち上げられることは、ペルソナの形成に大きく関わってくるでしょうし、影を抑圧する要因になるのかなと。理想を押しつけていないかどうか、自分ももう一度考えようと思います。

 

■ We Are Bulletproof : The Eternal


俺に石を投げろ 俺たちに恐れはない これ以上
We are, we are together, bulletproof
(Yeah, we have you, have you)
また冬が来ても 誰かが俺を阻んでも 歩いて行く
We are, we are forever, bulletproof

〈We are bulletproof PT.2〉と対になる形で、今の想いが語られるエモすぎる曲…。Pt.2では「俺くらいやったというなら石を投げろ 俺たちに恐れはない」と新人ならではの覇気で歌っていたわけですが、このアルバムを通して語られてきたような強い覚悟と自信をもって、改めて「石を投げろ」「恐れはない」と歌うところに泣けてしまいます。

その他にもたとえば「俺を見せてやる 刃を研いできた分」⇒「But so much pain, too much cryin’ 鈍くなる刃」など、色んなところにPt.2の歌詞にあるキーワードが盛り込まれていて、歴史を辿るような曲になっていますね。7人の美しいハーモニーといい、ライブで聴いたら泣くこと間違いないやつです。


■ Outro : Ego


信じるままに 進むままに
(その 道へ 道へ 道へ)
運命になって中心になった
(Wherever my way)
つらいままに 悲しいままに
(ただ Ego Ego Ego)
慰めになって自分がわかるようになった
(Just trust myself)

最後にホソクの明るい曲で締めくくられるの、あまりに完璧。ホソクは今でこそ希望にあふれた性格ですが、昔はそうではなかったようで、この曲では「諦めを選択した人生」に思いを巡らせています。この曲の中の「7年の心配がついに口の外へ」という歌詞を聴いて思い出したのは〈Black Swan〉の「抜け出そうとしても その口の中へ」という部分。ずっと抱えてきたものを、このアルバムを通して声に出しアウトプットすることで、受け入れて一つになることができたと歌っているのではないかと思いました。

 


以上です!ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!ちょっとずつではあるけれど、1曲ずつじっくり聴いて言葉にしていく良い時間が持てたなぁ。

ちなみに、この19曲の中で一番好きな曲をあげるとすれば、やっぱり〈ON〉です。次に〈小さなものの為の詩〉ですかね。やっぱりどちらもリード曲だけに一番伝えたい話が盛り込まれているように感じますし、音楽もよくて大好きです。その次となると選ぶのが難しくなってきますが、〈友達〉は本当に聴くと気分がよくなるのでかなり聴いていると思います。

BTSのアルバムはライブで歌われて完成するものなので、ツアーが始まればまた印象が変わることでしょう!そのツアー開幕の見通しが立たない状態なのは悲しいけど、きっとそのぶん開催されれば一公演ごとに魂を込めたステージを魅せてくれるでしょうし、今できることで応援を続けたいですね…!

 

BTS関連の記事、他にも書いておりますのでこちらもよろしければ…