Things I Didn't Know

ミュージカルが好き。歌とダンスと物語が好き。定期的にソウルへ行きます。

【観劇記録+歌詞訳】韓国ミュージカル『モーツァルト!』金海公演

韓国版「モーツァルト!」を観て来ました。

もともとは7月にソウル公演を観る予定で席を取っていたのですが、目当てのチョン・ドンソクさんが急性喉頭炎のため直前にキャスト変更になり、どうしてもドンソクさんのヴォルフガングが観たかった私は、釜山公演でリベンジすることにしたのでした。

こういったキャスト変更があった場合、希望すれば全額返金対応をしてくれるのも韓国ミュージカルのありがたいところですね…。ドンソクさんの代わりにジフンさんがヴォルフガングを務めたその公演ではやはり空席も多かったらしく、申し訳ない気持ちでいっぱいだったのですが、リベンジ費用にあてるためにも返金してもらいました。ジフンさんも観てみたかったんですけどね…!観たい公演、観たいキャストが多すぎて、取捨選択していかないとあっという間に破産してしまいます…。

ということで観劇レポとまではいきませんが、記録として当日ツイートしたこと+予習で訳したものをまとめて置いておきます。


◆9月3日 19:30 金海文化の殿堂

[ヴォルフガング]チョン・ドンソク
[コンスタンツェ]キム・ソヒャン
[コロレド大司教]キム・ジュンヒョン
[レオポルト]イ・ジョンヨル
[ヴァルトシュテッテン男爵夫人]キム・ソヒョン

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念願のドンチャルトは、どちゃくそ歌の上手い186cmの5歳児って感じでした。ほんとに子供の精神のまま大人になってしまった感じ。トートやジャックもそうだったんだけどドンソクさんのお芝居ってほんと2次元みが強くて、浮世離れしたキャラクター的な役がとても似合うんですよ。だけど同時に、小池修一郎氏もインタビューで言ってた通りモーツァルトってほんとにこういう人だったのでは?」って妙な説得力もあるんですよね。子供のような純粋さと素直さで、音楽を奏でる悦びを全身であらわす姿は淡々と楽譜に向かうアマデと対称的で、子供時代に昇華できなかったものがずっと残ってしまっているのかなと思いました。

韓国版M!自体は2014年にも観ているのですが、当時はまったく韓国語がわからない状態で観ていたので、今回観劇前にイチから予習として韓国版歌詞を調べてみました。ずっと初演のOSTばかりを聴いてたので気付かなかったのですが、今の《僕こそ音楽》の歌詞、初演から大きく変更されているんですね。(2014年版から変わってるぽいです)内容は現在のウィーン版の歌詞に基づいているので、原語版の歌詞改変に伴う変更なのではないかと思います。私は新歌詞で追加された、「才能は自分が自由を得るための翼だ」と言っている部分がすごく好きです。アマデが重荷となり苦しむ《影を逃れて》との対比性もつよくなるし、旧歌詞よりも断然良いと思います。

予習用の拙訳置いておきます。

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◆僕は 僕は音楽(나는 나는 음악)

どんな言葉も君を縛れはしない 
ただ君によって 僕は自由を見つけるのだから
君と僕 誰も恐れない
僕を踏みつける力を越えて 世界を驚かせて
僕は望むことだけをして
行きたいところにだけ行くんだ できる
自由を求めてる 僕の中の音楽が

誰が何と言おうと知っている 奇跡は必ず巡り来ることを
天が授けたこの才能が 翼になって 今 力の限り羽ばたく 
感じられる 全世界が求めていること
僕の中に流れている この知り得ないもの
僕は 僕は 僕は音楽
音楽のない僕の人生は意味がない

僕は詩人じゃない 詩人のような言葉も言えない
ただ思い浮かんだまま ただ心の赴くまま
僕は画家でもない 光と闇 影でさえ 描き方は知らない
夢の中でだけ 希望を描く
僕は俳優でもない 演技などできない
飾らず生きたい ありのまま
こんな僕の姿を見て欲しいんだ 僕の姿 そのまま

僕は長調 僕は短調 僕は和音 僕はメロディー
僕の単語 僕の文章 僕の感覚 僕のリズム 音楽の中に
僕は拍子 僕は休符 僕はハーモニー 
僕はフォルテ 僕はピアノ ダンスとファンタジー
僕は 僕は 僕は音楽

僕は長調 僕は短調 僕は和音 僕はメロディー
僕の単語 僕の文章 僕の感覚 僕のリズム 音楽の中に
僕は拍子 僕は休符 僕はハーモニー 
僕はフォルテ 僕はピアノ ダンスとファンタジー
僕は 僕は 僕は 僕は音楽
ありのままの僕の姿 僕を愛してください
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【動画】僕は 僕は音楽−チョン・ドンソク(2011年)


ウィーン版の歌詞はちゃんと訳を読んだことなかったし、これまで日本版の歌詞でしか「モーツァルト!」を知らなかったのですが、やはり日本語と韓国語ではメロディに載せられる情報量がまったく違いますね。今回韓国語歌詞を読んだことで、この作品に対する理解が深まった気がします。知ってる原語だと聴き流してしまうことも多いけれど、一語一語訳すことでしっかり言葉が頭に浸透するのもあるかもしれないです。

今回演出は小池修一郎氏が手がけたことで話題になりました。セットや照明、映像に動線にと日本版とは違うところもたくさんありますが、全体的には私には既視感のあるもので、あまり目新しい部分はありませんでした。《空から降る金(黄金星)》の舞台中に星があふれるプロジェクションマッピングは綺麗だったな〜。大階段を使った演出は、韓国では珍しく映ったんでしょうか。韓国の方に小池演出がどう評価されたのか、気になるところです。
これまでに観た、東宝版・新演出ウィーン版(BD)を含む4種類の演出の中では私はダントツで2014年韓国版演出が好きなので、いつか復活して欲しいです。

1幕ラストの《影を逃れて》、開演前に公開された音源の歌詞を覚えていったら、舞台では別の歌詞が歌われていたので、これも後ほど歌詞を調べてみたら、どうやら一部は2014年版歌詞、一部は初演の歌詞に戻ってるみたいでした。結構ややこしいところもあるので意訳が多く間違いもあるかもしれませんが…

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◆自分の運命から逃れたい(내 운명 피하고 싶어)

いらない 何も 誰もいらない
僕はこれ以上 その白いかつらも必要ない
赤い唇 ワインの香り やわらかな囁き
偽りなく 泣き笑う人生に 酔って生きたい 
僕は知りたい 

どうやって影を失って どうやって運命を拒んで
どうやって自分を拒否して 他の人になるのか 
誰に訊けばいい 自分でもわからないことを 
どうやって影を振り払い 自由を見つけるのか 
いらない 永遠も 死にも劣る生も
いたずらに夢を見る明日も 僕は嫌なんだ

美しい交響曲も 
僕を包みこむ女たちの肌の前には 何の意味もない 
自分は誰なのか 僕は知りたい

どうやって影を失って どうやって運命を拒んで 
どうやって良心を捨てて 難なく逃げられるのか
どこで出られるのか 自分自身が立ちはだかる道から
どうやって影を振り払い 自由を見つけるのか 

息もできないほどの恐怖 抑えつけられる肩
質問には沈黙だけ 誰も答えはしない
目を覆いたくなる刹那 息の詰まるような瞬間
僕につきまとう影 いつか僕を殺してしまうだろう

どうやって影を失って どうやって運命を拒んで
どうやって自分を拒否して 他の人になるのか 
誰に訊けばいい 自分でもわからないことを 
どうやって影を振り払い 自由を見つけるのか 

どうやって生きるのか ただ運命を受け入れるのか 
そんなこと 僕はできない 僕はもう自分の運命から逃れたい

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ドンソクさんの歌はほんとに圧巻です。やっぱりちゃんと喉の調子の良い時に聴けて、釜山まで来た甲斐があったな…。韓国版の音源を聴いたり歌詞を読んでいて、一番好きになったのは《何故愛せないの》なのですが、喜びも哀しみも素直に表現するドンチャルトだけに、この曲も床に伏せて拳を打ち付けながら絞り出すように感情をぶつけていて、最後の「僕の姿」のあとの長い沈黙も、涙に濡れる幼い表情にも、切なさでいっぱいになりました。あの八の字眉がかわいくてずるいんだよなー

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◆なぜ僕を愛せないのですか(왜 나를 사랑하지 않나요)

僕は信じてた 僕の喜び一緒に分かち合ってきたと
いつも言っていましたね あなたなしではだめだ
一人ではだめだ 後悔することになると
だけど今の僕を見て 誇らしい姿
なぜ見ないんです なぜ愛してくれないんです
僕の姿 そのまま

あなたは正しい
僕は意志が弱かったんです 期待も裏切りました 
だけど これが僕なんです
幸せになりたかったんです それが全部だった
僕の中に 幼い頃の僕が その子もまた訊ねる
なぜ愛してくれないのです 僕の姿 そのまま

近くたびに遠ざかる感じ 話かけても あなたは聞かない
もう僕を捨てたんだね
なぜ僕から離れようとするの
僕は他の人になることはできない 僕はあなたにはなれない
父さんが望む人生よりも ただ僕でいたいんだ

絶対に また天才として生きはしない 幼い頃のように 
僕が生きてる間 ただその可愛い小さな子
記憶の中にしまっておくんだ
戻りはしない ずっと僕の道を行きたい
もう戻ることはできない
理解して愛してくれないのですか 僕の姿
なぜ愛してくれないのです
愛してください 僕の姿 そのまま

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【動画】なぜ僕を愛せないのですか−チョン・ドンソク(2016年MV)



この曲も初演版から少しずつ歌詞が変わっていて、「これが僕なんです 幸せになりたかったんです」のあたりは追加された部分です。日本版歌詞に無いところでいうと、「僕は父さんにはなれない」というのは重要なところだと思います。レオポルトが息子を自分の分身として扱っていたことがヴォルフの苦しみの根源だったのですよね。別の人間として互いを愛することが叶わないまま死別してしまうのが、この作品のやるせないところです。史実に基づいているので、救いがないのは仕方がないのですが、2014年韓国版では最後にこの親子関係に救いを与えるとある演出があったのが好きでしたねー。

オポルトはN2Nでも素晴らしい演技に感動させられた、イ・ジョンヨルさん。美しく響く低温にしっかりと感情をのせていて、ほんとにこの方の演技には泣かされます。コロレド大司教のキム・ジュンヒョンさんもさすがの歌声でした!韓国版では2014年版よりヴォルフとコロレドの対決ソング《容易い道はいつも間違った道》が追加されたのですが、長身の二人が舞台の真ん中で向かい合ってるだけで絵になるし、圧巻の声量が重なって、2幕のヤマ場のひとつと言ってもいいくらいかっこよかった!あと男爵夫人役のキム・ソヒョンさんもいつか生で観たかった俳優さんの一人だったのですが、ほんっとにかわいくて撃ち抜かれましたよ…。あんなに可憐なのに、40代だと知って衝撃…。

これが最終公演だったドンソクさん。カーテンコールでは、安堵の表情で何度も大きく息を吐きながらジュンヒョンさんの肩に顔を埋めていて、すごく清々しかったです。7月には「ドンチャルトを観なければ夏を終えることはできない…」と絶望した私ですが、金海で気持ちのいい夏の終わりを迎えられて幸せでした!余裕を持って予習に取り組めたおかげで、M!っていう作品がより好きになったし、良い機会でした。


今回初めての釜山でした。1公演だけのために渡韓するのは初めてだったんですが、航空券もソウルより安いし、近いし、空港から今回の劇場へも釜山市街にも30分程度でアクセスしやすく、何より翌日食べた釜山ご当地グルメのデジクッパが最高だった。

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「松亭3代クッパ」のデジクッパ。茹で豚のクッパで味噌だのタレだの味変えながら食べるのがとても楽しい。6000ウォン。

あと金海空港も保安検査&イミグレ通過がスムーズで、コンパクトで移動距離が短いし、中にソルビンもコンビニもあるし、良かったな〜。Wi-Fiが全エリアに整備されてないのが唯一の難点ですかね。とにかく今後も軽率に弾丸釜山したいです!