Things I Didn't Know

ミュージカルが好き。歌とダンスと物語が好き。定期的にソウルへ行きます。

【観劇レポ】ミュージカル『エドガー・アラン・ポー』(에드거 앨런 포)

◆『エドガー・アラン・ポー』光臨アートセンター BBCHホール

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★『エドガー・アラン・ポー』ティーザー映像


 
2003年に作曲家エリック・ウルフソンが作ったコンセプトアルバム『POE』。イギリスではスティーブ・バルサモ主演でショーケースがおこなわれ、ソフト化もしていますが、本公演が上演されたのはこれまでドイツだけだったようです。この作品のことは韓国公演が決定するまで知らなかったのですが、マイケル・リーさんとチェ・ジェリムさんがともにポー役を演じられるとのことで、予習を始めました。
予習材料は、コンセプトアルバム・ショーケース版の映像・ポーの小説と詩集・メイン数曲の韓国語歌詞などなど。英語版歌詞はひととおり何となく頭に入れたものの、韓国版ではショーケース版から削除・追加された箇所も多く、わからない部分もたくさんありましたが、ざっくりと書きたいところだけ感想を書いていこうと思います。
あと、予習用に作った訳詞メモをちょこちょこツイッターに載せていたので、ツイートへのリンクも挟んでおきます。いつものことながら、私の訳はかなり雰囲気でやってるところがあるのであまり信用しないでください。今回は難しい表現も多かったので結構意訳しました。間違いがあったらごめんなさい。

◆6月4日マチネ

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[ポー]チェ・ジェリム
[グリスウォルド]チョン・サンユン
[エルマイラ]チョン・ミョンウン
[ヴァージニア]チャン・ウナ
[エリザベス]チェ・ユンジョン
[レイノルズ]チェ・ジョンソン
 
◆6月5日ソワレ

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[ポー]マイケル・リー
[グリスウォルド]チェ・スヒョン
[エルマイラ]キム・ジウ
[ヴァージニア]オ・ジニョン
[エリザベス]アン・ユジン
[レイノルズ]ユ・スンヨプ
 
1曲目《お月様の時間/Tiny Star》では、マントを被った人物に囲まれ苦しめられるポーのところに、亡くなった母親の幻があらわれ子守唄を歌います。劇中では何度もポーが母親の影を追い求めるような部分が。史実では、ポーは3歳の時に母親を肺結核で亡くし、親戚のところに引き取られたらしい。
2曲目《鷹の翼/Wings of Eagle》はメインナンバーのひとつ!ポーが出版社に作品を売り込みながら、自分は他人とは世界のまなざし方が違うのだと、頭の中にはてしなく広がる想像の世界を歌う曲です。

窓の外に見える風景 平凡な雨降る街
しかし私には違う 私の目の中
果てしなく広がる場所 平凡を拒んで
今あなたを招待する 私の目の中
鷹の翼 雷の声 冷たい雨 天上の聖杯 驚異に満ちて

ジェリムさんは「しかし私は違う 私の心の中」のところで両手で額縁をかたどってみせ、それを斜めに傾けます。"ポーは他人とは違う世界のとらえ方をする"というこの表現は、舞台上の傾いた額縁のセットにも表れてて、作品を通しての大きなテーマになってるようです。キャストみんながモノクロの衣装を着るなか、ポーだけが赤を着てることにもそれが表れてます。
あとこの曲ではふんだんに映像演出が用いられます。この作品における映像部分はポーの頭の中を表現していて、ポーのいないシーンでは映像は使われません。私はすぐ過剰な映像演出に文句つけるマンなので、正直「映像うるせえ!」ってところも多々あったのですが、この《鷹の翼》や次の曲《モルグ街の殺人事件》でめまぐるしく色とりどりにポーの想像の世界が表現されるからこそ、2幕で病んでからの映像の沈黙とのコントラストがはっきり出るのかもしれません。にしても、"炎"とか"目"とか歌詞で表現されている部分をそのまま映像で見せるのは野暮なんじゃないかと思う私は。もっと抽象的に控えめにして欲しい。ただ、文字が翼の形になってはばたくところはとても好きです。アンサンブルもポーを取り囲んで翼を表現。かっこいいです。

《鷹の翼(매의 날개)/プレスコール》チェ・ジェリム
 https://www.youtube.com/watch?v=4gYKzoF1h0A
《鷹の翼(매의 날개)/練習動画》チェ・ジェリム
https://www.youtube.com/watch?v=VnBS_d6ILdY

★《鷹の翼》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/730789440008773632

ポーとアンサンブルによる《モルグ街の殺人事件/The Murders in the Rue Morgue》はもうそのまま有名な小説の内容を説明した歌詞で、ポーの書く小説に熱狂する民衆が描かれてます。いたずらっぽい表情のジェリムさんも、嬉しそうな満面の笑顔のマイケルさんもかわいかったな~。
 
★《モルグ街の殺人事件》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/740538187362140160

ショーケース版からの変更点はグリスウォルドに関する部分が特に多いです。狂言回しのようにグリスウォルドの語りが入るのですが、当然追加された台詞は内容がわからなくてもどかしい。特に一番最初にグリスウォルドが登場するシーンでの台詞、どんなことを言ってるのか誰か教えてください…。
ポーとグリスウォルドが初めて会うところは、ポーが《鷹の翼》のメロディにのせてグリスウォルドの作品を痛烈に批判し、そこへグリスウォルドがあらわれておっと気まずい…みたいな緊張感のあるシーンなんですけど、ジェリムポーは笑顔を取り繕おうとしてるのに対し、マイケルポーは嫌そうな顔で握手した手を思いっきりぬぐう。この仕草何度かやってましたね。なるべく目を合わせないようにしてるし、全然嫌悪感を隠してない感じ。ここから粘着質グリスウォルドのしつこい報復が始まります。スヒョンさんは無機質に復讐プログラムを遂行するって感じ。サンユンさんはじっとり蛇みたいに絡み付く感じ。サンユンさんの重い前髪の奥で光る目が妖しくて素敵。
 
《初対面(첫 대면)/プレスコール》キム・ドンワン、チェ・スヒョン
https://www.youtube.com/watch?v=Zu74fbzHEN4

★《初対面》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/741923793656893440
 
ショーケース版だとここから、レイノルズが調べてきたポーの過去をグリスウォルドに説明するという形で話が進むんですが、韓国版ではポーと婚約者エルマイラの逢瀬をグリスウォルドが影から見ていて、2人が引き離されるのもグリスウォルドが仕組んだってことになってます。史実どおりの時系列ではないんですけど、とにかくポーの没落の影に常にグリスウォルドがいるのが韓国版です。このシーンは、ポーの母親の墓前で繰り広げられるんですが、後ろには婚約指輪の形を模したモニュメントがあって、2人が引き離されると指輪も2つに割れます。
失恋して精神的に追いつめられポーがアルコールと薬漬けになるロックナンバー《落とし穴と振り子/The Pit and Pendulum》。万華鏡みたいなサイケデリックな映像演出。母親の顔がどろどろと溶け出すイメージも。翼の形のセットがこの曲では振り子に変わるところが良いです。ジェリムさんもマイケルさんも本領発揮!って感じのシャウトが聴けます。かっこよすぎ。かっこよすぎて笑っちゃう。そんで薬漬けのポーは編集者をクビになり、そのポストにはグリスウォルドが。

★《落とし穴と振り子》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/741984949687848960
 
次のシーン、ショーケース版ではグリスウォルドがこき下ろすためにポーの《大鴉》を朗読するのですが、韓国版ではポーが講演会にあらわれ自ら《大鴉》を読むという設定に。ショーケース版の、最初は嘲笑うように詩を読んでいたグリスウォルドにだんだん熱がこもって、憎悪するポーの書いた作品に完全に引き込まれてしまうところ、ポーの並外れた才能が伝わってきて好きでした。韓国版は朗読のシーンに代わって《大鴉》を要約した内容の歌詞のオリジナル楽曲を追加しているのですが、歌詞も抽象的すぎてわかりづらいし、ぼんやりしたシーンになってしまった印象はあります。だけどこのメロディがドラマチックでとても良いし、ジェリムさんとマイケルさんの歌声が素敵なので結果オーライって感じでしょうか。そりゃ"Lenore""Nevermore"ってフレーズにはメロディつけたくなるよね。聴きながらレイノルズがだんだんポーの方に体を傾けてしまい、グリスウォルドにたしなめられててかわいい。
     
《大鴉(갈가마귀)/プレスコール》チェ・ジェリム
https://www.youtube.com/watch?v=-8_59JWF8dE
 
「大鴉」を聴いた人々はポーは天才だと絶賛。ここの《私の目の前の天才》は英語版だと"It Doesn't Take a Genius"にあたる曲ですが歌詞はまったくのオリジナルになってます。アンサンブル曲ではあるけどラストに繋がるフレーズが入っててすごく良い改変だなと思いました。好きなのはこの部分。

深い悲しみ 私の魂をたっぷりと潤してくれ
残忍な痛み 涙も流れないようにして
時代を超える者 今私の前に立っている
忘れられない不幸と失った希望を思い出す
絶望の中でも 最後まで私たちは問いかけるしかない
同じ答えが出ても 私たちはまた問いかけて

★《私の目の前の天才》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/741984949687848960

グリスウォルドは、ポーの才能は悪魔が与えたものであり自分は神に代わってポーの堕落した作品を葬ると誓います。
 
《落とし穴と振り子(함정과 진자) reprise》チョン・サンユン
https://www.youtube.com/watch?v=yKI0dxU7Xm8
 
★satokoさんが字幕付動画を作ってくださってます!
힘정과 진자 (Reprise) 韓国語歌詞+日本語訳付きバージョン  

なんやかんやありまして、いとこのヴァージニアと結婚することになったポー。人々に祝福され結婚式をあげますが、ヴァージニアは結核を患っており、式の途中で体調を崩します。さらにグリスウォルドの差し金でレイノルズがポーに酒を贈り、禁酒していたポーがふたたび酒に手を出すことに。2人の生活に暗雲が立ちこめる様子が1幕ラストの《鐘/The Bells》で表現されます。

英語版の《The Bells》はポーの詩をそのまま歌詞にしたもので、子供のころの希望にあふれた鐘の音→結婚式の祝福の鐘の音→警戒と絶望の鐘の音→死を告げる鐘の音にと、繰り返されるメロディが段々重さを増してくるのがぞくぞくします。韓国版はアンサンブルが重厚なうえ、最後はグリスウォルドの歌声が加わってものすごい迫力。もともと好きな曲でしたが、演出も曲のアレンジも度肝を抜かれるかっこよさになっててびっくりでした。歌詞はラストのパートが勝利の鐘の音になっており、グリスウォルドの圧倒的なハイトーンで暗転し1幕おわり。なんだこれー!かっこいいー!ってしばし呆然としました。

★《鐘》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/741832597676818432

やっぱり大劇場の1幕ラストは血が沸騰するくらいかっこいいやつを持ってきてもらわなければ!最高です。
2幕は病床のヴァージニアが歌う韓国版オリジナル曲"One"から始まります。チャン・ウナさんは少しハスキーな歌声もとても素敵だし、苦しそうな演技が上手で、ぜいぜいと荒い息をするところはこっちも観ていてすごく焦燥感に駆られました。ポーの腕の中で息を引き取るヴァージニア。
ヴァージニアを失って生きる意味を見失うポーの《観客席のどこか/Somewhere in the Audience》、ここのマイケルポーが消えそうに弱々しくて、棺によりかかる儚げな姿に超きゅんとする…守りたい…かわいい…マイケルさんのかわいさって何なんだろな…。
 
《観客席のどこか(관객석 그 어딘가)/練習動画》キム・ドンワン
https://www.youtube.com/watch?v=JpP4pHoIVwM
 
ヴァージニアを亡くして自暴自棄になるポーにつけこむためポーのところを訪れるグリスウォルド。映像は暗い洞窟の中みたいに重く静かで、ポーが想像力を失ってしまってることがわかります。グリスウォルドは「あなたを応援しています、私があなたを守ってあげます」と甘い言葉をかけて、作品の権利を自分に託すように仕向けます。ポーをソファに抑えつけるようにのしかかるグリスウォルド。われわれは何を見せられているのか…?という気持ちに…。サンユンさんのねっとりした迫り方イイ。支配欲がだだ漏れしてる。スヒョンさんはポーに触れながらもほんとは嫌悪感しかないって感じだ。藁をも掴むようにグリスウォルドに頼ろうとするジェリムポーと、グリスウォルドに従うしかないけれど悔しくてしかたないって感じで握手をためらうマイケルポー。

★《私を信じてⅠ》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/739856568389246976
 
ポーは未亡人になった元婚約者エルマイラと再会し元サヤに。女の人がそばにいてくれないと生きていけないんですね。

《私を照らして(날 비추네)/プレスコール》キム・ドンワン、キム・ジウ
https://www.youtube.com/watch?v=oD4BtLm_Jhw

《私を照らして(날 비추네)/練習動画》マイケル・リー
https://www.youtube.com/watch?v=GSYJ3jWfR2Q

グリスウォルドはポーを擁護するポーズを取りながら、人々を巧みに言葉であやつり、ポーについての悪い噂を吹聴しまくる。 笑みが堪え切れないサンユングリスウォルドの顔が完全に悪魔だった。さらっと「人間のクズ」とか言ってるしな。
 
★《私を信じてⅡ》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/744082100777717760

そこへ生きる気力を取り戻したポーがやってきて、作品の権利を返して欲しいと要求。《鷹の翼(リプライズ)》でポーは創作意欲を取り戻し、ふたたび文字達がポーのもとに集まってきて翼の形をつくり羽ばたく。だけどそれもつかの間、3人の男たちがやってきてポーを滅多打ちに。瀕死のポーのところにグリスウォルドがやってきてポーの手をとり額にキス。サンユンさんのグリスウォルドは愛しそうな顔でポーを見て、冷たく打ち捨てるのがぞっとする。ポーは息を引き取り、迎えにきた母とともに消えていきます。
グリスウォルドは、ポーは死に地獄で神に裁かれるだろうが彼の作品は依然として脅威だ、自分が葬ると誓います。実際グリスウォルドはポーが死んだときに「彼が死んで泣く者はいないだろう」という内容の記事を出しており(匿名で寄稿し後に彼だと判明したらしい)、生涯ポーの名を貶める活動をしたらしい。ポーの死の真相は今でも明らかになってないですが、韓国版ではグリスウォルドが黒幕だったことになっていて、全編を通してポーの不幸の裏にはグリスウォルドがいたことになってます。グリスウォルドはポーの作品を葬るために心血を注いだわけですが、ポーが世界中の人々の共感を得たのは作品の中に絶望が描かれていたからであって、その状況を作り出したグリスウォルドはポーの作品の普及の片棒を担いだことになりますね。
この曲のラスト、暗転の直前にグリスウォルドが青く照らされる一瞬があるのですが、サンユングリスウォルドは目を閉じて祈る姿勢をとったのに対し、スヒョングリスウォルドは斜め下を向いてたじろいだような顔を見せたのが印象的でした。ねっとりとした愛憎をポーに向けていたサンユングリスウォルドと違って、スヒョングリスウォルドはひたすら冷血にポーを忌み嫌う復讐サイボーグみたいな印象があったんですが、最後の最後で動揺の表情が出たのは驚いたし、グリスウォルドの敗北を示唆していて、好きな表現でした。
 
《お前を審判する(널 심판해)reprise/プレスコール》ユン・ヒョンリョル
https://www.youtube.com/watch?v=haqsTxSCLIY

★satokoさんが字幕付動画を作ってくださってます!  
널 심판해 (Reprise) 韓国語歌詞+日本語訳付きバージョン 
 
ラストナンバー、白い衣装を着たポーが登場し観客に語りかけるように歌います。

捨て去られ 引き裂かれても
永遠に生きて息づく 私の心の中の物語たち 
世の中がすべて移り変わっても 変わらないだろう 
私は永遠になる
 
《永遠(영원)/プレスコール》マイケル・リー
https://www.youtube.com/watch?v=DRlxlPYtTnI

★《永遠》日本語訳
https://twitter.com/_ozmopolitan_/status/737316323726786560

★satokoさんが字幕付動画を作ってくださってます! 
영원 韓国語歌詞+日本語訳付きバージョン
 
正直なところこの作品、多くの人が指摘しているように、話としては惜しいと思います。「創造」「愛」「絶望」いろんなテーマがありますが、全編をとおして芯のとおったメッセージというものがあるかといわれると疑問。グリスウォルドのポーへの執着も、エルマイラやヴァージニアとの愛も、母への想いも、深いところまで描かれておらず、感情移入がしにくいです。ただポーの人生を描いたという印象は否めません。
しかもポーはライバル・グリスウォルドによって悲惨な最期を迎えていて、とてもやりきれないラストです。だけどそのポーのグリスウォルドに対する敗北をすべて覆すのが、この《永遠》という曲。後世でポーの作品がどうなったかを知る観客に向けて、あなたたちの中で物語を完結させるようにと語りかけるメタ的な役割を持っていて、作品のすべてがこの曲にかかっていると言ってもいいと思います。だからこそ、ポーを演じる俳優には圧倒的な歌唱力で解放と勝利を表現する力が求められます。
話の中にカタルシスを求める方にとってすっきりしきれない部分があるのもすごくわかるのですが、私はジェリムポーとマイケルポーが最後に高らかに「私は永遠だ」と歌い上げてくれたことによって色んなものがすべて昇華された気がしたし、満足感いっぱいになりました。とにかくエリック・ウルフソンの音楽と、ポーを演じる俳優の歌声がほんとうに素晴らしいので、それだけでリピートできてしまう中毒性があります。それと個人的には、韓国版はグリスウォルドのキャラクターがぐっと深まっててちょー萌えるのでそこも大きなポイント。 
 マイケルさんが7月から『ノートルダム・ド・パリ』に出られるため、ちょっと早くポーを抜けてしまうということで、もうマイケルポーが観られないのがすごーく残念なのですが、ジェリムポーはあと2回観られる予定。グリスウォルド大本命のヒョンリョルさんもまだ観られてないので、来月までにしっかり歌詞を頭に入れて臨もうと思います。


【6/22追記】
6/21にMBCで放送された特番でポーが紹介されてました。ちょっと順番おかしいとこ多々あるんですけど、プレスコールで出てないシーンの映像が出ててこれはありがたい!《落とし穴と振り子》のジェリムさん、こんなにはだけてなかったよ…!?この中でノ・ウソン演出が翼と額縁のセットについて解説してくれていたので雑な訳ですがのせておきます。

【翼のセットについて】
翼の形の構造物はポーの作品を象徴している。しかしこの翼の形の構造物は鋭い材質でできている。これは彼の生み出した芸術作品が、逆に骨になり毒になって自らを刺した彼の人生を象徴している。 彼の人生は不幸だったが、彼の作品は結局彼に翼を与えてくれて、永遠に私たち後世の人たちに贈られるという、そのような意味を内包している。
【額縁のセットについて】
広がるこの空間を基本的な額縁の枠組みに構成。当時、彼の作品は「悪魔の文」と歪曲された。表現する額縁が次々に分かれて互いに交差して一つの直角も作っていない舞台を構成した。

ポーにとって表現することは諸刃の剣だったということでしょうか。自分の作品が自らを苦しめたっていうところは、このミュージカルにおいてはグリスウォルドがそれを象徴しているのでしょう。もともとある英語版の歌詞の中の「翼」と「振り子」っていう2つのキーワードをひとつのセットで表現したのはほんとすごいなと思います。そして舞台に広がる空間と、その枠に留まらず自由な形をつくる額縁のセット、これは言うなれば前者がグリスウォルド視点の世界の見え方で、後者がポー視点ということですよね。物語を率いる存在としてグリスウォルドが狂言回し的な立ち位置にいるのも当然ですね。次回はそこらへんに注目しながら観ようと思います。