Things I Didn't Know

ミュージカルが好き。歌とダンスと物語が好き。定期的にソウルへ行きます。

【観劇レポ】フランケンシュタイン 2/27 ドンソク・ウヒョク 2/28 ジュンサン・ウヒョク

※こちらは公演の詳細なレポになります。作品自体のあらすじと感想につきましては下記記事をどうぞ!


◆2月27日ソワレ


[ビクター/ジャック]チョン・ドンソク
[アンリ/怪物]チェ・ウヒョク
[エレン/エバ]イ・ヘギョン
[ジュリア/カトリーヌ]イ・ジス

まずは2回目のドンソク×ウヒョク。(以下ドンニュ※ウヒョクくんが[ニューアンリ]略してニュアンと呼ばれているためペア表記がニュになってます) 


またもや指揮者がイ・ソンジュンさんでした。ラッキー! 

ウヒョクアンリは《たった一つの未来》後半での笑みが増えてました。「生命の主体になる」のところで瞳を輝かせ、握手の前も期待に満ちた目でビクターを見てます。《だけど君は》で「お願いだ、友よ」されたあとは後ろに組んでいた手をぱたりと落とし、少しだけ右手を伸ばそうとしてぐっと拳を握り直す仕草。 

そういえば《孤独な少年の物語》でのシュテファンの「留学させてしまえ、できる限り遠くに」でいつも「叔父さん留学させてくれるんだ~親切~」って一瞬思っちゃうんですけどシュテファンにとっては血が繋がっている手前(ビクターの母親の兄弟なのですかね?)捨て置くこともできないし(体裁的に)、ドイツに追いやっておくのが最善策だったんですかね。そこでビクターはのびのびと研究に没頭することになったわけなんだから完全に裏目に出たとしか思えないんですが。もともとビクターが帰ってくることを許すつもりはなかったけど、ビクターが勲章を貰ったことでころっと態度を変えたという感じですね。そもそもビクターも戦争が終わって軍で研究を続けることができなくなったから仕方なくジュネーブに戻ったわけですけど。それにしても「死なない軍人の研究」だなんて軍の重要機密だろうに放っておいて大丈夫なの?

あとものすごく突っ込みたいのが、大きな城を持つほどの血筋だったのになぜビクターの父親が医者だったのかってところです。そこらへん考え始めるとほんと突っ込みどころはごろごろ出てくるんですけどまぁそこはフィクションていうことでいいか。村人が「城が閉鎖されて20年は経った」と言ってるのでビクターは30歳前後といったところでしょうか。ジュンサンさんは47歳なわけですけど、ほんと若く見えるんで30代半ばでもいけちゃいますね。(身体はちょっと重そうでしたけど) 

あと20年くらい会ってなかった幼馴染を待ち続けたジュリアは粘着質すぎてちょっと怖いなーとか(しかもあれほど体裁を気にするシュテファンがよく市長の娘がその歳で未婚でいることを許したよね)それを考えると「ジュリア黒幕説」も俄然真実味を帯びてきますね。ジュリア黒幕説とは、アンリが裁判にかけられた時にビクターと仲の良いアンリに嫉妬したジュリアがシュテファンに手回ししてビクターの証言を取り下げさせたというもの。これ考え出すとジュリアのイメージががらりと変わるのですが、あの清らかなジュリアお嬢様が裏ではそういうどろどろした感情を抱えていたのかと想像すると一気に人間らしさが出るので、冗談レベルの深読みではあるのですが私はこの説だいぶ気に入ってます。この説を採用したら《私はなぜ》の前の「貴方の選択を信じる」とか言ってるとことかすんごい怖くなるし、そんなジュリアがアンリの頭を持った怪物に殺される時に何を思ったんだろうって考えるとなかなか浸れます。 

◆◆◆ 

話が逸れましたが、エレンの回想が終わり実験に失敗したビクターが「脳が焼けてしまった…」とアンリに泣きつくところ。エレンに気付いたドンソクビクターが責めるようにアンリを見るとウヒョクアンリは気まずそうに目を逸らします。エレンが訪れた時のルンゲの突っぱね方が見ても、ビクターはルンゲとアンリに、エレンが来ても取り次ぐな、関わるなと言ってあったのでしょうね。だけどどうしてもジュネーブに来てからのビクターの神経質な様子が気になってこっそり出てきてしまったんでしょうか。ビクターはアンリに自分の過去を知られることを恐れていたような気がします。過去を知られることで自分が研究に向かう理由に気付かれてしまうのではないかという思いが、 酒場の「私ビクター・フランケンシュタインもほんのつまらない人間だということを確認したかったのか」という台詞から伺えます。だからビクターが弱さをぶつけ、アンリがそれを受け止めることで関係性が変化する酒場のシーンがすごく好きなんだろうなー。 

この「脳が焼けてしまった」のシーン、最近ドンソクさんが終演後にファンからの「なぜビクターはあのような態度を取ったのか?」という質問に対して、「自分に近づいたらエレンが不幸になると思って遠ざけていたのに、アンリがエレンを連れてきたと思ったから」と答えられてます。毎回同じ解釈でやっておられるとは限りませんが、この話を聞くともう少し時間さえあれば、アンリがビクターとエレンたちとのすれ違いを解消してあげられたんじゃ…って気がしてきます。そしてそんなヤマアラシのジレンマを抱えるビクターのパーソナルスペースに入ることが許されてるアンリとルンゲは如何に特別な存在かってことですよね。怪物がルンゲを殺した瞬間、ビクターはその二人を同時に失うことになったわけですから、その絶望は計り知れないです。 

◆◆◆ 

話を戻しまして、酒場のシーン。3週前に観たドンニュ回とはかなり違うものが見れました。この回、初めてウヒョクアンリを下手から観たんですよね。2幕の重要なシーンでの表情が上手の方が見やすいので、怪物を観るなら断然上手なんですが、一度は下手から観ておきたかったので。特に酒場は上手じゃ見えなかった細かい表情が追えてとても良かった。今持ってる席、可能なら下手に変えたいくらい。 

ビクターを殴る男達を制止して、理由を聞くウヒョクアンリ。「こいつ世界が滅亡するだなんて縁起でもないこと言いやがる」って言われた時の苦笑いが「あ~ビクターならそういうこと言うでしょうね、すいません」みたいな、いかにも慣れてそうな感じ…。「酒代、僕が払います!全部!」のあと店主に「そりゃ計算が楽でいい」と言われ、「でしょっ」って感じでニッコリ笑って指パチンてするのがかわいい…。大男ににじり寄られ、パン!と目の前で手を叩かれてついファイティングポーズを取る。あ、出ちゃったって感じでひそかにぐっと拳を抑えてたけど、やっぱりウヒョクアンリはボクシング経験者なんです?w
うなだれたビクターに酒をすすめるアンリ。ビクターの手をとってぎゅっとジョッキを持たせるの、好きなんですよね~。「一杯やりますか?」もものすごく優しい言い方をするんですよ~。そして、ビクターに注がれたお酒をニッコニコ笑いながら肩越しに後ろにバシャーって捨てるw気づかないドンソクビクターに「ほら呑め」って促され、一気にジョッキを煽って、目をぎゅーっと瞑ってわざとらしく「あ~キツいわ~」って顔。まんまと騙されて満足げな表情のビクター。また注ぎ足す。ウヒョクアンリ、また笑顔でこっそり捨てるwタイムリープしてね?って言いたくなる鮮やかさ。立ち上がるけど今日はふらついてない。呑んでないからねw
もう今日は完全にドンソクビクターのアルハラぶりを熟知したウヒョクアンリが一枚上手って感じです。ビクターを慕って健気に励ますのもいいけど、実はビクターが手玉に取られてるパターンも好きだ~。

テーブルの上でもいつもは本来はシャイなアンリが酔って楽しくなっちゃったから踊るって感じなのですが、今日は持前の明るさで踊り出すみたいな、なんだか全体的に余裕のあるアンリでしたね。2人でテーブルから降りた後、一瞬ビクター「酔った?」アンリ「ちょっとね」みたいなジェスチャーがありましたね。笑顔でうそつくウヒョクアンリ最高にいいな…。ダンスも一緒にじゃなくアンリが先に踊り出してビクターが続くパターン。 

このへんの掛け合いってどこまでが打ち合わせ済みでどこまでがアドリブなんでしょうね。やってて楽しいんだろなー。ちなみにハングルでレポを漁ってると3/9マチネでは飲み干したジョッキをこっそり伏せてテーブルに置くウヒョクアンリを見たドンソクビクターが自分のジョッキから無理矢理呑ませていた様子。3/13マチネでもウヒョクアンリが酒を捨てるところが見つかってめちゃめちゃ呑まされる展開だったみたいなので、ここのところドンソクビクターが優勢のようですね。この二人の酒場の攻防は一体なんなんだw 

あとこの回のジャンピング抱っこちゃん、なんか抱っこ待機みたいな微妙な間ができてしまってて前観た時ほどきれいに回ってなかったんですけど、これがカーテンコールへの伏線になったのでした… 

歓喜のドンソクビクターがヒャッホーイ!ってテーブルから飛び降りて去っていくところ好き。なんか高橋留美子の漫画にでも出てきそうなおもしろジャンプするよね。ジャックといい、ドンソクさんはアニメキャラみたいな動きが多くてよく2.5次元みを感じます。あと「お勘定、お勘定!」と言われてしばしポケットまさぐってから「あちゃー」って顔して、ルンゲに押しつけてトンズラするウヒョクアンリもかわいい。 

◆◆◆ 

ルンゲを噛んだあと、ウヒョク怪物は返り血で遊ぶみたいな仕草を見せます。首を絞められて、赤ちゃんみたいな無垢な表情でわけがわからないというように一生懸命首を回して背後を見ようとして、ビクターを認めて悲しそうな目をするところがすごくつらい…。あとウヒョク怪物が窓から飛び降りるところがものすごく好きです。綺麗にコートを翻して高く飛ぶの、アメコミのヒーローの飛び方みたいで惚れ惚れする。

 《そこには》では少しカトリーヌとの距離が近くなった気がします。下手から観たのもあるかもしれないけど、以前はずっと北極の幻を観ているような感じだったのがしっかりカトリーヌへの親しみの表情が出てきたような。《私は怪物》では目の前に何か幻を見て、それを掴もうとして我に返り再び絶望する芝居が入るようになりました。 

今回の《絶望》では、ビクターに対して純度100%の憎しみを向けているようで、縋りつくビクターを嘲笑し、1幕最後の咆哮の時のような憎しみの表情を剥き出しにします。「生きて私の苦しみを味わえ」のところと、バルコニーに登り「傲慢な私の創造主よ」のところでは皮肉たっぷりにお辞儀。ドンソクさんも狂ったような笑いが入ったりと、《絶望》は二人ともどんどん表現の幅を広げていってるシーンだと思います。 

 《ジュリアの死》で変装して出てくるシーン、これまでは怪物ともアンリともとれるような表情と声色だったのだけど、今回は完全にアンリが戻っていてすごくビクターに対して同情的な視線を向けていたのが印象的でした。 

◆◆◆ 

そしてこの回の北極シーン。年始に見た回ではウヒョク怪物がピストルを構える時は二つの人格がせめぎあっているような印象だったのですが、もうこのあたりでは憎しみの表情というものはなく、少し感情の昂ぶりを抑えたあとは静かな表情でピストルを手渡すという感じでした。そしてピストルを撃った後、一瞬驚いたような顔を見せるドンソクビクター。
この時のお芝居について、終演後にドンソクさんが語られたことがかなり衝撃的でした。撃ったあとにピストルを驚いたように見る仕草はこれまでの回では無かったものらしく、あるファンの方が終演後に「ビクターはなぜピストルを見たのですか?」という趣旨の質問をされたそうです。それに対してドンソクさんが「あれはビクターが望んで撃ったのではなく事故だった。アンリに撃つことを強要され、その手を捕まえようとして手が重なり引き金が引かれてしまった」と答えられたとか。これはファンの方がやりとりを要約してツイ―トされたものを私がさらに翻訳しているので、ドンソクさんの言葉が正しく伝わっているのかどうかはわかりませんしあくまでもニュアンスですが…。

もちろん他の回では自ら引き金を引いているので、この回に限定された話ではありますが、ビクターに撃つ意思がなかった(もしくは躊躇った)っていうのは驚きの解釈です。怪物を殺すんだっていう確固たる思いを持って北極まで辿りついたのだろうにいざアンリの頭を持った怪物を目の前にすると撃てなかったのか…。1幕最後でバルコニーにいる怪物を撃とうとした時に弾が逸れたのも偶然ではなかったのかもと思ってしまいます。 

◆◆◆ 
この日のカーテンコールは酒場のリベンジ抱っこちゃんでした。ドヤ顔で腕を広げるドンソクさんに、ふうっと一息ついてから勢いよく飛びつくウヒョクくん。ドンソクさん、不意打ちだっただろうによろよろしながらも律儀に回してあげるのはもはや条件反射なんですかね?そして降ろしてからへなへなになって爆笑してたのがツボでした。最後に仕切り直しでハグして緞帳。あ、あまーい… 


◆2月28日ソワレ

 

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[ビクター/ジャック]ユ・ジュンサン
[アンリ/怪物]チェ・ウヒョク
[エレン/エバ]イ・ヘギョン
[ジュリア/カトリーヌ]イ・ジス 

続きましてジュンサン×ウヒョクのユニュペア。 

この日は本来のキャストスケジュールではジュンサン×ウンテの日でしたが、ウンテさんのインフルエンザに罹ったことによる喉の不調が長引き、キャスト変更でウヒョクくんが登板しました。ユウンが観たくて取っていた回ではありましたが、本来なら3週間ほど前に既にマッコンを迎えておりもう観られないと思っていたユニュペアが復活してくれたので、残念なのと嬉しいのとで複雑な気持ち。かなり払い戻しもあったと思いますが、当日は空席も目立つことなく、とても盛り上がっていました。 

◆◆◆ 

私はここに来てやっと初のジュンサンビクター。ジュンサンさんとウヒョクくんは歳が25歳も離れており、親子親子って呼ばれていたので私も勝手に親子ペアって呼んでたのですが、実際ジュンサンさんめっちゃ若く見えるので親子というほどではなかったですね。 

ジュンサンビクターは心の底では周囲の人間を大切に想っていることが感じられる優しくて繊細なビクターでした。他の二人のビクターは常に意識が内向きで、特にコニョンビクターはそれがついに変わらないまま幕が下りる印象だったのですが(最近は表現が変わりつつあるという話も聞きます。年始に一度観たきりなのでマッコンが楽しみです。)単純に歌詞と台詞を読んだ時の私のビクターのイメージはこれに近かったので、ジュンサンさんはそれと真逆のビクターで新鮮に感じるところがたくさんありました。 

ジュンサンさん自身の人の良さそうな外見や優しい声(動画で観ていたのよりずっと上手かったし何よりあの声が好きです)のせいもあると思うけど、とにかく嫌味な台詞を言っていてもなんか周りに人が寄って来ちゃいそう…みたいな、他のビクターとは違う種類の吸引力を持ってるように感じました。アンリが惹かれてしまうのもよくわかる。本当は他人を愛したいと思ってるのがすごく伝わってくるビクターで、アンリだけに心を開いているというよりは、実は人間愛が強い人に見えました。歪んでるというより、心の底にあるものを隠して抑えているイメージ。 

これものすごく伝わり辛いとは思うのですが、私の中での3ビクターの印象を立体で言い表すと、まずコニョンビクターは立方体です。誰も寄せ付けず自分だけで完結しているような。ドンソクビクターは針鼠みたいに棘で覆われた球体。他者を受け入れる奥行を持ってるけれど近づくと傷つけてしまうみたいな。ジュンサンビクターは卵形、というか繭って感じ。殻の中に閉じこもってるみたいな。めちゃくちゃ抽象的な表現ですいません。 

エレンの死後、回想の中の幼いジュリアに言う台詞「僕が帰ってきたら、皆が危険になる」をすごく苦しそうに言うのが印象的で、この時にジュンサンビクターはこれに猛烈に囚われてるんだなと腑に落ちた感じがありました。怪物誕生の時の「アンリが生き返った、私が生命を創造したんだ」のところも泣き出しそうなくらい歓喜に打ち震えた言い方で、呪いから解放されることへの喜びが痛いくらいに伝わってきました。 

◆◆◆ 

そんなジュンサンビクターにウヒョクアンリは初めからかなり圧倒されていて、実験室に連れて行かれ挑発を受けるシーンの「お言葉があまりに過ぎます!」という台詞もいつもは猛烈に怒りを表現するのが、「お言葉が!…あまりに過ぎます…」と相手が命の恩人であることを思い出して反発しきれないみたいな言い方になってました。 

序盤はジュンサンビクターに対して「憧れ」って感情が強いように思えたウヒョクアンリなのですが、酒場でアンリを抱きしめながら「自分の意志が通せない。何かに私の魂を飲み込まれるみたいだ…」と呟いたジュンサンビクターを椅子に座らせて「一杯やりますか?」とジョッキを持たせるところで一気にビクターを見る表情が大人びて、急激に二人が対等になったような印象がありました。踊るウヒョクアンリとそれを楽しそうに見るジュンサンビクターも微笑ましかった。 

《君の夢の中で》はもうジュンサンビクターがめちゃくちゃ泣くのでそれにつられてなのか、ウヒョクアンリもこれまで観た中で一番涙声になってました。めっちゃ泣きながら「僕のために泣くな」って言うの切ない…。もう絶対に放すものかって勢いでジュンサンビクタ―がアンリの手を掴んでるのも泣けた。ものすごく感情を込めつつも力強く、ロングトーンの伸びも素晴らしくて、私が観た中でも最高の歌唱でした。 

そういえば、怪物が蘇生するシーンでジュンサンビクターがちゃんと頭まで毛布をかけてくれなくて、ウヒョク怪物が起き上がって「あああああ」って言うところで完全に顔が見えてしまうというハプニングがwあれ絶対恥ずかしいはずだから焦らずちゃんと毛布かけてあげてw 

ジュンサンジャック、《お前は怪物だ》終わりの客煽りが最高に楽しいですね!ウヒョク怪物を苛める憎い奴だということも忘れてヒューヒュー言ってしまったよ。あの、場内全部自分のものにしちゃってる感じ。楽しかった~。 

《私は怪物》は声量と伸びも最高で、「絶望の中に陥れてやろう」の歌い上げがそのまま鳴き声に繋がり、そのまま地に両手をついて絶叫するのですが、ここの絶叫が本当に痛烈で、かつてないくらい悲壮感に満ちてました。そして自分の首を取り外そうともがき、自嘲し、身体を傷つけるように胸を叩いたあと、ふいに無垢な表情に戻り目の前にある何かを掴もうとして再び絶望する。ほんとにここの感情表現は観るたびに深まってて、しばらく後のシーンが全然頭に入ってこないくらい心持ってかれます… 

◆◆◆ 

北極でビクターを迎える時、あんなにはっきりと微笑みを見せるウヒョク怪物も初めて見ました。北極での表情は2ヶ月でかなり変化した部分だと思います。回を増すごとにアンリの意識の割合が増えているように見えるウヒョク怪物の復讐は、蘇った自分を愛してくれなかったビクターへのアンリとしての恨みを感じます。自分を失ったことを後悔して欲しいと思ってるような、壮絶な片思いの結末っていう印象になってきました。 

ジュンサンビクターのラストは他の2ビクター以上のやるせなさを感じました。ジュンサンビクターはすごく周りの人たちのことを大切に想っていて、生命創造も自分から遠ざけようとすることも愛する人たちを守りたくてやったことなのに、すべて裏目に出てしまったという感じです。母親やアンリたちを想うあまりに不幸を招く自分自身を憎んでいて、それゆえに自分が創造したアンリではない生命を愛することができなかったんだろうという気がします。 

ジュンサンビクターは最後「アンリ起きろ」と何度もアンリの名前を呼びます。最初から最後まで他者のことを想い、自分を呪ったままで幕が閉じるこのラストは私にとっては3ビクターの中で一番哀しいものでした。アンリの名前を呼び続けるジュンサンビクターは結局怪物の哀しみを理解することはできなかったように感じます。怪物は「アンリ」と呼ばれることを拒んでいました。ビクターはただ「アンリの生まれ変わり」としてではなく、新しいひとつの生命として怪物の存在を認める=名前をつけるべきだったんだと思います。ビクターの被造物でありアンリの記憶を持つ怪物は、ビクターにとっての自己と他者の両方を併せ持った存在です。自分の分身としての怪物を理解することは、自分自身を見つめることでもあるのですが、ついにそれができないまま自らへの呪いを深めたジュンサンビクターはただただ不憫で、復讐を遂げビクターに抱かれて眠った怪物は残酷だと感じてしまいました。 

ビクターが最後に怪物に「アンリ」と呼び掛けるかどうかは、脚本にはない部分ですので役者それぞれの解釈によって異なります。ジュンサンビクターは毎回何度も呼ぶようだし、コニョンビクターは一度も呼んだことがないと聞きますし、ドンソクビクターは私が観た回では呼んでいませんでしたが呼ぶこともあるようです(怪物が事切れた直後に「アンリ」と呟きますが、最後に名前を呼ぶのとは少し意味合いが違う気がします)フランケンの良さは同じ脚本で毎回違う結末が観られるところだと思っているので、どの解釈が好きでどれが嫌だとかそういうのはないのですが、これまでに観た中で私が一番救いを感じたラストはドンソクビクターがただ「みあね(ごめん)」と呟いていた回でした。 

ビクターが、失ったものはもう元に戻せないことに気付いて新しく始めることができなかったのは、自分の憎しみや哀しみの根源を見つめることができていなかったからだと思います。それが具現化したものが怪物であり《傷》のシーンの幼いビクターなので、ビクターは最後に心から怪物を悼むことでしか自分を救うことはできないと思います。ビクターは最後「むしろ私を呪え」と叫びます。ビクターが「呪い」と呼んでいたものは他者がいてこそ成り立つもので、一人きりになったビクターにはもう意味を成さず、あとは自分自身と向き合うしかありません。そうさせたことはアンリ/怪物の愛でもあったのかなと思います。《傷》で幼いビクターを水に落としたのと同じように。ラストに向かうにつれ徐々に怪物はアンリの意識を持つようになりますが、これはアンリそのものに戻るのではなくアンリの記憶を取り戻すことによって怪物がビクターの孤独を理解し同調するっていうのが私の解釈なので、私にとってはこの作品は怪物のものではなくあくまでもビクター・フランケンシュタインの物語なのだと思います。 

◆◆◆ 

これでやっとメインキャスト6人を観られたわけですが本当にキャストによって全然違うし皆さん毎回やってることが変わるのでもういつまでも観続けられそう…だがしかし悲しすぎることに千秋楽が目前に迫っております。既にマッコン鬱に襲われてて来週から廃人になりそうなのですが…最後までしっかり見届けてまた感想を書こうと思います。 

まただらだらと長くなってしまいましたが、この日のカーテンコールはまずジュンサンさんが腕を広げ、ウヒョクくんがジュンサンに向かって頭の上でハートを作り、ジュンサンさんもそれに応えてハート、ウヒョクくんがお辞儀し、ハグで緞帳でした。 

◆◆◆ 

ついでの余談なのですが、最近韓国のファンの方のツイートで見かけた意見で「再演でとある台詞がカットされたことにより怪物の身体能力についての説明が失われた」っていう意見にはっとしました。再演で削除されたのは2幕冒頭のビクターのジュリアに対する台詞で「私たちの実験の最終目標が何だったか、わかるか?人間を上回る、卓越した軍人を作ることだった。」というものなんですが、確かに私もこの台詞を知っていたからこそ怪物が熊をも倒す身体能力を持っていることに納得できていたのかも…。削除されたのは間違いだったような気もしてきます。

私は初演を観ていないものの、基本的に脚本における再演での変更点、特にジュリアとの結婚と《あなたなしでは》が削られたことと、《傷》がジュリア殺害の前⇒後に移動したことについては絶対的に正しいと思っているのですが、再演で変更になったらしい台詞についてはいくつか惜しいなというものがあります。 

ひとつはアンリに「お言葉が過ぎます」と反発された時のビクターのアンリの論文についての台詞。

 [初演]
ビクター:挑戦的な青年、アンリ・デュプレ。はははは…ようやく君らしくなった。気に入ってるよ。ああ、君の論文を読んでみた。 非常に印象的だった。

 [再演]
ビクター:アンリ・デュプレ。君は2年前に、ある論文を発表した。人間の死体の再利用。(中略)私はその論文があったから、政府を説得できた。

ここ、初演だとビクターが論文を読んだ時点でアンリの技術のみならず人柄にも興味を持っていたことがわかる台詞だったのになーと、ちょっと残念です。 

もう一つ、酒場でのビクターの台詞「どうやって新鮮な脳を探す?殺人でもしないことには」に続く、再演では完全に削除されたやり取り。 

ビクター:そう、殺人でもしたい。それでこの呪われた運命を否定することができればね。
アンリ:これは本当に失望だ。僕の命の恩人がこんなにも軟弱な魂の所有者だとは。僕は本当に君は強いとばかり思ってた!
ビクター:強かった、強かった! だけど…この街では自分の意志が通せない。意志に関係なく…私の魂を飲み込まれる感じだよ。 

これに代わって追加されたのが「なぜ来た」から始まるアンリへの八つ当たりと自嘲的な台詞なのですが、初演の台詞はビクターが如何に過去に囚われているかを知ることができる部分だと思うし、残しておいて欲しかった気が。最後のビクターの台詞は残ってますが「この街では」が消えているのが引っ掛かります。あった方がいいと思う。 

大してコンパクトになってるわけでもないし、このへんの変更の意図はちょっとよくわからないですね。日本版も東宝から公式に発表されましたが、どの程度脚色が入るのか気になります。